食品を購入するとき、誰もが一度はカロリーや脂質の量に注目したことがあるでしょう。なんだかむずかしそうな「食品成分表」も、見方を変えればわたしたちの生活に役立つおもしろい情報が満載!? この連載では、食品成分表マニアの管理栄養士・藤原朋未さんに読み解いていただきます。初回の今回は、「食品成分表ってなに?」「どんなことがわかるの?」という疑問をいっしょに解決していきましょう。
Contents 目次
食品成分表をご存じですか?
はじめまして、管理栄養士の藤原朋未です。
今回から「食品成分表」をテーマとしたコラムを連載させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします!
さっそくですが、みなさんは『日本食品標準成分表』をご存じでしょうか? 略して『食品成分表』と呼ばれ、文部科学省より公表されている食品成分に関するデータ集です。
毎年データの追加や変更があり、5年に1度全面改訂が行われています。その5年ぶりの改訂が約1年前に行われ、栄養士業界を揺るがした一大事となりました。
食品成分表のデータは栄養士だけではなく、消費者であるみなさんも一度は目にしたことのある身近な存在なはず。冷蔵庫の中にある食品やふだんお使いの調味料、スーパーやコンビニで買った食品、それらの栄養成分表示を確認してみてください。裏面や側面に記載された四角で囲われた部分です。そこに【※推定値】や【※この数値は目安です】 などの記載を見つけたら、その数値は『食品成分表』のデータをもとに推定された栄養成分であることがわかります。一方でそれらが書かれていない、もしくは検査をした場所が記載されている場合は、その食品を実際に検査して検出された栄養成分データです。
改定後の最新『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』には、現在2,478品の食品が掲載されています。食品可食部100g当たりの栄養成分の含量が示されているのです。
食品成分表の情報量は膨大すぎる…! こんなことまでわかるんです!
先ほど「100g当たりの栄養成分の含量」とお伝えしましたが、くわしくは、2,478の食品が穀類・野菜類・魚介類・肉類・油脂類など、18項目に分類されています。そのうえで、それぞれのエネルギー(カロリー)や水分、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン類やミネラル類など、合わせて54成分に加え、各組成成分(アミノ酸組成・脂肪酸組成など)を含めた約150成分がひとつの食品に対して分析、または推計されています。具体的には、
「クロワッサンの脂質は食パンの約5倍」
「じゃがいものビタミンCはゆでると6割に減るが、電子レンジ加熱だと9割摂取することができる」
「鶏もも肉は皮を除くと約37%のカロリーカットになる」
「水道水の無機質、関東では他の地区と比べて硬度が高く、マグネシウム量が多い」
これらのことも、食品成分表のデータを見ればわかるんです! 見ているだけで、わくわく…しませんか…? ダイエット中などで食事制限をされている方や、ふだん食品の栄養成分が気になる方でしたら、きっと興味深い内容がつまっているかと思います。
食品成分表の新掲載から分かる、食のトレンド
さて、食品成分表は「文部科学省」が公表しています。ここに掲載されるということは、いわば“国が認めた食品!”と言えるのではないでしょうか。
食のトレンドは移り変わりが激しく、私たちの食卓に定着するものは限られています。毎年更新される食品成分表のデータ、新たに追加された食品を5年間さかのぼって調べてみると食のトレンドが見えくるではありませんか…!
<2015年 掲載数2,191品>
2010年から大改訂(1,878→2,191品)
えごま油・減塩しょうゆ・減塩みそ・米粉製品…
えごま油の流行はつい最近のできごとだと思っていましたが、2015年のことなのですね…(苦笑)。減塩商品や米粉類、健康志向品が大幅に増えた2015年の改定でした。
<2016年 食品数 2,222品>
インディカ米・ライスペーパー・ドライマンゴー
かつおだし 本枯れ節・あごだし・魚醤油 いしる
家庭でもエスニック料理が楽しまれるようになってきたのがこの頃でしょうか。一方で2013年にユネスコ無形文化遺産として登録された和食をきっかけに「出汁」にこだわった商品や料理が多く浸透したのがわかります。
<2017年 食品数2,236品>
えぞしか
ほんしゅうじか・きゅうしゅうじか
2014年に厚生労働省が「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」を発表したことで、ジビエ料理の提供が本格化したともいわれています。それから3年後、食品成分表にもシカ肉が加わりました。
<2018年 食品数2,294品>
おおむぎ、押麦、めし
チアシード
スーパーフードとしても人気の大麦やチアシード。「今さら?」という気持ちもありましたが、定着性や話題性から追加されたのでしょう。大麦の「めし」というのは炊き上げたあとの数値ということです。ゆでた大麦が手軽に摂取できるようにレトルト商品がよく見られるようになっていますね。そのほか、冷凍食材の栄養価が増えているのも確認できました。
<2019年 食品数2,375品>
コリアンダー(パクチー)・アサイー・くこ(ゴジベリー)・赤米・黒米
2018年に続き、スーパーフードと呼ばれる食品が多く追加されています。パクチーは今まで掲載がなかったのですよね。栄養士としてもやっと入ってくれたか…という気持ちでした!
<2020年 食品数2,478品>
2015年から大改訂
調理済み流通食品の掲載数の増加
昨年は主に調理済みの流通食品が増えたことが大きなポイント。いんげんのごま和えや豚汁、カニクリームコロッケ、ぎょうざ、もやしのナムル…
同一レシピではない場合が多く掲載がむずかしいとされていましたが、近年の食の外部化(テイクアウト・大規模調理)により主要な料理を掲載することになったのです。
まもなく行われるであろう2021年の追加食品はなにになるのでしょう。アーモンドミルクやオーツミルクなどの植物性ミルク、代替肉として話題となった大豆ミートあたりが濃厚ではないか…と予想しています!
いかがでしたか? 食品成分表、知れば知るほどおもしろいと思いませんか?
次回は、冬の定番お鍋の野菜の栄養について、食品成分表のデータから読み解いていきたいと思います!
参考文献
日本食品標準成分表2020年版(八訂) 文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html
日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2016年
日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2017年
日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2018年
2019年における日本食品標準成分表2015年版(七訂)のデータ更新について 文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1411578_00001.html