コロナ禍での生活が始まって、はや丸2年。常にマスクをし、手指の消毒、検温が求められ、人との距離に気を配らなければならない新しい生活様式にもすっかり慣れたかに思えます。けれども、終わりの見えないコロナの不安に長くさらされて、知らず知らずにストレスをためている人も多いのではないでしょうか。じつは朝に温かいスープを飲むことが、ストレスへの対処法になるそうです。日本スープ協会主催の「スープセミナー」で、精神科医・古賀良彦先生のお話を伺いました。スープ作家・有賀薫さんによる、市販のスープを利用した簡単オリジナルレシピもご紹介します。
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ストレスに対処するのに必要な「Recreation(娯楽、楽しみ)」は3度の食事でまかなおう!
コロナによるパンデミックブルーとストレス対処法について語ってくださったのは、古賀良彦先生(杏林大学名誉教授、医学博士)。
「新型コロナウイルスの感染拡大により、人類は今までに経験のないような不安が長く続く状態に置かれています。確実な対応策もない、先の見えない状況下で、ストレスがたまっていくのです。これをパンデミックブルーと言います。
現在、多くの人にとって、ストレスを生じさせる最大の原因はコロナ問題と言えるでしょう。一方、人にはストレスに抵抗する力があります。自律神経、そしてホルモンの働きがそれです。これらは外からのストレスに抵抗し、無意識に心と体のバランスをとってくれます。
また、もっと積極的にストレスに対処していくためには次の“3つのR”が大切です。
・Rest(休息)
・Relaxation(休養)
・Recreation(娯楽、楽しみ)
『十分に睡眠をとること(Rest)』『心も体もリラックスさせること(Relaxation)』も大事ですが、なかでも注目したいのがリクリエーション。毎日の生活の中で、楽しみを積極的に作っていくことはとても大切です。その楽しみは、食事の中で得ることもできます。
食事のときに、“これは体にいいから食べる”と理屈で考えるだけでなく、食事を心から楽しむことが効果的です。食事は1日3回も楽しめる。香りや食感を楽しみながら、おいしいな、と味わって食事をしているときは、コロナなどのストレッサーの存在を一瞬忘れ去ることができます。できればひとりでなくご家族で、ぜひおしゃべりをしながら食事を楽しんでください」
朝の温かいスープが足先の温度を2℃上げる!?
食事のうちでも朝の温かいスープをおすすめしたいという古賀先生。
「体温が1日の中でいちばん低くなる時間帯は午前8時ごろ。この時間に温かいものを食べることによって、体温を上げることができます。食事という最も安全な方法で体温を上げることができる、スープはとてもいい手段です。たとえば65℃の温かいスープを飲むと、冷えた足先の温度が最大で2℃も上がります。
また、朝、学校に行くのをぐずる子どもに手を焼いている家庭もあるかもしれませんね。調査によると、標準的な体温の子、体温の低い子を比べたとき、体温の低い子どもの約3割が学校に行くのをぐずる、という結果が出ています。
温かいものを食べることには、体温を上げるとともに、脳の働きを安定させ整えるという効果もあります。下の図は頭に128個の電極をつけ、65℃のポタージュスープと20数℃の水を飲んだ時の脳のα波の量をそれぞれ精密に測定し、比較したものです。
左は冷たい水を飲んだときのα波の量を見たもの、右は65℃のコーンポタージュスープを飲んだときのものです。右のほうは、後頭部が赤くなっており、α波が明らかにたくさん出ていることがわかると思います。
このように、温かいスープを飲むと、脳でα波が多く出るということがはっきりしました。α波が出ているということは、脳が整って安定して働いているということで、ストレスの予防に非常に役に立つといえるでしょう」
古賀先生によると、ストレスに効果がある食材には以下のようなものがあるそうです。日々の料理にじょうずにとり入れてみましょう。
続いて、家族の朝食に毎日スープを作り続けて10年というスープ作家・有賀薫さんにオリジナルレシピのスープを教えていただきました。市販のインスタントスープにストレスに効果のある食材をプラスした、手軽に作れる3品です。
ごまとナッツ入りのかぼちゃポタージュ
かぼちゃのスープに、ストレスにも効果的とされる黒ごまとナッツを加えることで、香ばしい香りが広がり、おいしさアップ。
[材料(1人分)]※印はストレスに有効な食材
味の素「クノール®️ スープDELI®️ 完熟栗かぼちゃの濃厚ポタージュ パン入り」 1個
黒ごま※ 小さじ2
好みのナッツ※ 少々
[作り方]
(1)スープをパックの表示通りに作る。(熱湯を入れてすぐに15秒かき混ぜたあと、1分待つ)
(2)黒ごまをすりつぶす(もしくは刻む)。ナッツを砕く。
(3)(2)をスープにトッピングする。
鮭とブロッコリーのビスク風スープ
エビのうまみが凝縮したビスク風スープに、抗ストレス作用のある鮭と、ビタミンCが豊富なブロッコリーをプラス。
[材料(2人分)]※印はストレスに有効な食材
ハウス食品「StewP(シチュープ)ビスク風おかずスープの素」……1袋
生鮭※……2切れ(200g)
ブロッコリー※……1/2個(150g)
牛乳……100ml
[作り方]
(1)生鮭とブロッコリーは食べやすい大きさに切る。
(2)湯を350mlわかす。鍋にブロッコリーと鮭を入れ、沸騰したら6~7分煮込む。
(3)StewPと牛乳を加え、5分ほどさらに煮込む。好みで粉チーズなどを振ってもよい。
●鮭はひと口大に切った後、薄く塩を振って5分くらい置き、水分が出てきたらペーパータオルで押さえてから使用する。こうすることで鮭のくさみがとれる。
●鮭の代わりに鶏肉などを使ってもいい。
にんじんと鶏肉、みかんのスープ
にんじんの甘みとみかんの甘酸っぱさが特徴の、冬にぴったりなレシピ。
[材料(2人分)]※印はストレスに有効な食材
マギー「コンソメ無添加」……スティック1本
にんじん※……小1本(150g)
みかん※……小1個
鶏むね肉……50g(好みで増やしてもOK)
塩、こしょう……各少々
オリーブオイル……小さじ2
[作り方]
(1)にんじんはピーラーで皮をむき、そのままピーラーで薄切りにする。
みかんは皮をぐるりと薄皮ごとむいてから、残った薄皮にそって房をはずす。鶏肉は薄くそぎ切りにする。
(2)オリーブオイルでにんじんをこがさないように炒める。
こげつきやすいので水を少し加えてもいい。
(3)水500mlとコンソメ無添加を加えて、にんじんがやわらかくなるまで煮る。
(4)鶏肉を1枚ずつ加えてさっと煮る(煮過ぎない)。塩とこしょうで味を調え、みかんを加えて火を止める。
●みかんの皮をきれいにむくのがめんどうな場合は、半分に切って果汁をしぼって使ってもいい。
みかんをスープに使うことに驚く方もいらっしゃるかもしれませんが、意外にもかんきつ類とにんじんは相性がいいそうです。
市販のスープをそのまま食べるほか、体にいい食材をプラスしたこんなレシピも魅力的。ぜひ試してみたいですね。まだまだ寒い日々が続きそうですが、温かいスープでストレスを忘れ、心も体も温めて冬を乗り切りましょう。
取材・文/千葉 明日香