近年、世界的にも注目されている腸内細菌と肥満の関係。菌ケア専門家の下川 穣さんも「ダイエットにはやせ体質をつくってくれる菌を増やすことが大切」と話します。今回は、下川さんの新著『腸活にも、美肌にも、ダイエットにも! 菌ケアで美しくなる』より、“菌ケアダイエット”についてお伝えしていきます。
Contents 目次
食欲をコントロールする菌の存在
肥満には遺伝や食生活、運動習慣などなどさまざまな要因がありますが、じつは腸内細菌も深くかかわっています。
「ある研究で、腸内細菌の肥満への影響を調べるために、通常体型の無菌マウスに、肥満体型のマウスの腸内細菌が移植されました。すると、太っていなかった無菌マウスの食欲が増していき、体重の増加が見られたのです。さらに、別の研究では無菌マウスにカロリー満点の高脂肪の食事が与えられましたが、無菌マウスは太ることがありませんでした。この2つの研究から、肥満の状態をつくり出している特定の腸内細菌の存在がわかったのです」
カギを握るのは、腸内細菌がつくり出す「代謝物」。肥満の人ほど食欲を増進させる成分をつくり出す菌が多いのだといいます。
やせ体質をつくってくれる菌を増やす
このように肥満を引き起こしているのは腸内細菌ですが、やせるカギもやはり「菌」。では、どのようなダイエットが合っているでしょうか。
「ダイエットといえば、まず挙げられるのが糖質制限ですが、過度な糖質制限は日本人にとって相性が悪い可能性も示されています。世界中の人々の腸内細菌の組成を調査した研究では、日本人は糖質を分解する菌をほかの国に比べて多くもっている傾向にあり、さらに、日本人は世界的に見てビフィズス菌も多くもっていることが判明しました。ビフィズス菌もオリゴ糖などの炭水化物をエサにする菌の一種なので、コメを主食とする日本人である私たちにとって糖質は大切な栄養素であるといえるのかもしれません」
過度な糖質制限は“やせ菌”を減らしてしまう恐れも。ダイエットには、食欲を抑えたり、エネルギーの消費量を増やしたりするスーパー物質「短鎖脂肪酸」をつくり出す“やせ菌”がカギとなります。
「“やせ菌”は世界的にも注目され、研究が進んでいます。“やせ菌”の代表は、アッカーマンシア・ムシニフィラ菌で、やせ菌であると同時に、腸のバリア機能にとっても大切な菌です。肥満の人ほどアッカーマンシア・ムシニフィラ菌が少ない傾向にあることがわかっています。もうひとつは、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ菌。酪酸をつくり出す酪酸菌の一種です。酪酸は短鎖脂肪酸のなかでも、特にエネルギー消費を高めたり、食欲を調節したりする効果が強いといわれています。つまり、ダイエットをするにあたって頼もしい存在なのです」
腸と菌にフォーカスした「菌ケアダイエット」
やせ菌をじょうずに増やす菌ファーストの菌ケアダイエット。その基本となるのは、以下の5つのポイントです。
・白い炭水化物を茶色の炭水化物に置き換える
・週3回以上蒸し料理を食べる
・基本の飲みものは緑茶にする
・夜ごはんは早めに食べて、次の食事まで12時間空ける(プチ断食を行う)
・やせ菌を育てる成分を積極的にとる
緑茶に関しては、「エピガロカテキンガレートがエネルギー消費をサポートし、体重や脂肪組織を減少させる効果が期待されており、やせ体質つくりにも役立つ」とのこと。
またプチ断食は夕食を18時までにとり終え、それ以降は朝まで何も食べないというゆるいものでOK。それでも腸内細菌にプラスとなります。
「空腹の時間を十分につくること。これだけで腸内の肥満につながる菌が減少し、逆に“やせ菌”が増えることがわかっています」
最後の腸内のやせ菌を育てるためには、イヌリン型フルクタンやアラビノキシランオリゴ糖を。これらの成分を摂取するためのオススメの食材は、ごぼうとキクイモだそう。
「ごぼうは水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を豊富に含み、キクイモはイヌリンの含有量がダントツで多い食材。スーパーやショッピングサイトで見かけたら、ぜひ手に入れてみてください」
ヘルシーなダイエットにも菌ケアは大切ですね。やせ菌を増やし、腸内環境を整えることで、ストレス性の過食が抑えられたり、睡眠の質が高まったりと、よいループが続いていきます。
参考書籍
『腸活にも、美肌にも、ダイエットにも! 菌ケアで美しくなる』(幻冬舎)
著者/
下川 穣(しもかわゆたか)
KINS代表、菌ケア専門家。岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3か月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導を行う。医療法人時代に、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌ケアによる根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。
取材・文/庄司真紀