古くから世界のさまざまな文化圏で食材や薬として利用されてきたしょうが。体を温める作用があることで知られ、新陳代謝を助けるなど、さまざまな効果につながるとされています。さらに最近の海外研究では、しょうがは免疫細胞である白血球に直接的に作用して、免疫機能を高めると報告されました。しかも、ふだん食べているしょうがの量でも効果があるといわれています。
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辛味成分「ジンゲロール」で実験
しょうがは日本では昔からよく使われる食材であり、薬でもあります。最近ドイツでもしだいに人気が高まり、この10年で輸入量が4倍近く伸びているといいます。この増加に伴い、しょうがを定期的に摂取するだけで健康効果が得られるのか、どのような物質がその効果に寄与しているのか、人々の関心が高まっているようです。
しょうがは唐辛子などのピリッとした味をもつ辛味食品とともに、辛味成分である「ジンゲロール」や「カプサイシン」が、感覚神経に存在している「受容体」と呼ばれるタンパク質と結合することで感じられます。この受容体は熱や辛味などの刺激に反応することが知られています。
今回、ドイツの研究グループは、これと同じ受容体が免疫細胞である白血球にも存在する可能性が過去の研究で報告されている点に着目。しょうがの辛味成分が白血球の活動に影響を与えるかどうか調べてみました。
具体的には、人間のさまざまな種類の白血球の細胞としょうがの辛味成分を使った実験です。辛味成分には、やはりこれまでの研究からしょうがのお茶を飲んだあとの血液中でいちばん多く見られたジンゲロールという成分を選びました。
少量でも免疫反応を強化
こうして研究で確認されたのが、まず、白血球にも辛いものを感じる細胞と同じ受容体があることです。白血球と呼ばれる細胞にはいくつか種類がありますが、細菌などの侵入に対する最初の防御反応で中心となる「好中球」というタイプ(白血球全体のおよそ3分の2を占める)で見られました。
研究グループは、しょうがに含まれる微量のジンゲロールが好中球を刺激し、活性化させることを確認しました。作用に必要なジンゲロールの濃度は1リットルあたり15マイクログラム(マイクロは100万分の1)。これはジンジャーティー1リットルを飲むと得られる量ということ。研究グループによると、日常的にしょうがを摂取していれば、免疫系を刺激するのに十分である可能性があるといいます。
また、活性化した好中球が免疫反応を30%高め、細菌などに対してより反応しやすくなることも判明。一方で、研究者らが好中球のもっている辛味を感知する受容体をブロックすると、ジンゲロールの好影響は消失しました。このことからジンゲロールがこの受容体に結合することで作用すると考えられました。
今回の論文では、しょうがは私たちの免疫系によい影響を与えることを明らかにしました。日本では、豆腐や刺身などの薬味としてしょうがが使われることが多く、毎日の食事に簡単にとり入れることができます。今回の研究結果をもとに、しょうがに期待される健康効果を活かすため、食事にもっと頻繁にとり入れるようにするとよいかもしれませんね。
<参考文献>
Pungent Ginger Compound Puts Immune Cells on Heightened Alert
https://www.leibniz-lsb.de/en/press-public-relations/translate-to-englisch-pressemitteilungen/pm-20230214-press-release-ginger-immune-system/
Andersen G, Kahlenberg K, Krautwurst D, Somoza V. [6]-Gingerol Facilitates CXCL8 Secretion and ROS Production in Primary Human Neutrophils by Targeting the TRPV1 Channel. Mol Nutr Food Res. 2023 Feb;67(4):e2200434. doi: 10.1002/mnfr.202200434. Epub 2023 Jan 26. PMID: 36564924.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/mnfr.202200434