
新型コロナの位置づけが2類から5類になったとはいえ、アフターコロナはもう少し続きそう。そうなるとこれからの時代、カギとなるのは個人の免疫かもしれません。免疫力が高い人は重症化のリスクが極めて低いということがわかっています。今回は、小林弘幸先生の『名医が教える 免疫力が上がる習慣』より、研究で解明された新型コロナで重症化しなかった人の特徴をみていきましょう。
Contents 目次
特徴その1.ビタミンDの不足がない
ビタミンDには免疫機能を調整する働きがあります。
「ビタミンDは風邪やインフルエンザ、気管支炎、肺炎などの予防に役立つといわれていますが、最近は新型コロナウイルスとの関連性で注目を集めています。新型コロナウイルスの感染患者にビタミンDを投与した研究では、ビタミンDを投与した患者は重症化のリスクが著しく減り、ビタミンDには新型コロナウイルスの感染や重症化を防ぐ効果があるという可能性を裏づける結果となりました」(小林先生)
ビタミンDが不足すると、新型コロナウイルス感染症の発症リスクが約1.5倍、軽症以上の入院リスクが約2倍になるという研究報告もあります。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、ビタミンD摂取の目安は成人の男女ともに1日あたり8.5gとなっていますが、厚生労働省の「平成30年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、日本人1人1日あたりのビタミンDの摂取平均値は6.6gで、日本人の約7~8割はビタミンD不足に陥っているというのが現状です。
ビタミンDは日々の食事でとることができます。鮭やイワシなどの魚介類や干ししいたけなどのキノコ類、卵などはビタミンDが豊富な食材。また太陽の光を浴びることも有効で、夏であれば日中に10分前後、冬なら20分〜30分ほどの散歩やウォーキングで十分な量のビタミンDをつくることができます。
特徴その2.体脂肪率が過剰ではない
コロナ禍が始まって以来、肥満と重症化の関係はよくとり沙汰されました。標準よりも体重が多いというのではなく、注視したいのは体脂肪率のほうです。
「肥満は単に体重が重いだけでなく、体脂肪が過剰に蓄積している状態です。もしBMIが25以上で、体に不調を感じていたら要注意です。肥満症やメタボが恐ろしいのは、肥満が悪化すると免疫力が正常に機能しなくなることです。新型コロナウイルス感染症では、肥満の人の場合、重症化のリスクが3倍以上高くなるといわれています」
肥満になると脂肪細胞が肥大化しますが、この肥大化した脂肪細胞から炎症を引き起こすサイトカインが大量に放出され、全身に慢性炎症を引き起こして免疫力が低下してしまうのです。これはコロナに限ったことではなく、肥満によって免疫力が低下すると、アレルギー疾患や心筋梗塞、脳梗塞を発症するなど、さまざまな健康被害を引き起こす原因になります。
特徴その3.運動習慣がある
運動不足は体力が低下するだけでなく、肥満や生活習慣の原因になり、何より免疫力を低下させることにつながります。
「体を使って運動すると免疫力が上がり、さまざまな健康効果を得られることもわかってきています。新型コロナウイルス感染症においても、運動する習慣が感染と重症化のリスクを低下させ、ワクチンの効果を高められることが英国のグラスゴー・カレドニアン大学やベルギーのゲント大学の研究で明らかになりました。ウォーキングやサイクリングなどの運動を『週に150分以上』継続的に行っている人は感染リスクが31%低く、感染による死亡のリスクも37%低かったと報告されています。また、ワクチンによる予防効果も40%高まることも示されました」
運動することで血流が改善し、免疫細胞が活性化します。また自律神経が整ったり、腸内環境がよくなったりすることによって免疫力によい影響があると考えられます。
少なくともこれらの3つのポイントをクリアして、免疫力が高い状態をキープしておけば、軽度以上の悪化を避けることができるといえそうです。
文/庄司真紀
参考書籍/
『名医が教える 免疫力が上がる習慣』(アスコム)
著者/小林弘幸
こばやし・ひろゆき 順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」。さらに、腸と密接なかかわりをもつ、自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導にかかわる。『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)などベストセラー多数。「世界一受けたい授業」(日本テレビ)などメディアにも多く出演している。
監修者/玉谷卓也
たまたに・たくや 薬学博士。日本免疫学会評議員。順天堂大学非常勤講師。創建協会取締役。1988年、筑波大学医科学修士課程修了。2008年に順天堂大学医学部客員教授に就任。20年、任期満了に伴い現職。この間、武田薬品工業、ソニー、エムスリーにも兼務。主な専門領域は、免疫学、炎症学、腫瘍学、臨床遺伝学。20年以上、免疫、がん、線維症、アレルギー、動脈硬化などの研究に従事。