私たちが日常で食べている野菜のほとんどは、 長い年月をかけて野生種(原種)から改良を重ねて生まれたものです。そのままでは実が小さかったり、えぐみがあったりして食べられなかったものを、栽培や改良を重ねることでおいしく食べられるようにしたのです。さらに現代では、用途別のものも作られるようになっており、そんな野菜の品種について紹介します。
Contents 目次
なぜ改良するの?
次のような理由が挙げられます。
・おいしく食べやすくする
例えばきゅうりは、昔のものと比べて苦くなくなりました。また大根は昔のものよりも辛みがおさえられている品種があります。
・四季のある日本で、周年で供給する
キャベツやブロッコリーは冷涼な気候を好みますが、改良を重ねることで暑さへの耐性を高め、いろいろな地域で作ることが可能になります。
・四季のある日本で、周年で供給する
・病気に対する耐性を高める
・栄養価を高める
野菜の原種と改良された品種
野菜はどんな原種から派生し、どのような品種が作られているのかトマトとじゃがいもを例に見てみましょう。
トマト
[原種]
南米ペルーを中心としてアンデス高原の太平洋側の地域で自生していた野生種と言われています。現在のミニトマトのようなチェリータイプのトマトだったようです。
[食用の歴史]
原種がメキシコに運ばれ、食用として栽培されるようになり、ヨーロッパ、アメリカ、日本へと伝わりました。ヨーロッパには16世紀に伝わっていたようですが、食べられるようになったのは18世紀になってから。最初は有毒植物ではないかと考えられたようで、観賞用として栽培されました。日本でも、17世紀に観賞用として伝わり、食用になったのは明治以降です。
[用途に合わせた品種]
今のトマトは、昔のトマトとくらべて青くささがなくなり、甘くなりました。いろいろな料理や使い方に合うようにもなっています。
・生食用の甘いもの:桃太郎(上のイラスト左)、ファーストトマトなど
・火を通して料理をする加工用のもの:にたきこま(右)、クッキングトマトなど
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このほか、トマトジュース専用の品種(NT604など)や、一般的なトマトよりGABAの含有量を増やしたトマトなどもあります。
じゃがいも
[原種]
中南米から南米のアンデス山脈が原産地。今でも3000m以上の高地では、じゃがいもの原種となった野生種が残っています。
[食用の歴史]
中央アンデスの高地ではじゃがいもを食用として保存していたようです。その後15世紀の終わりにヨーロッパに渡りました。しかし原産地よりも温かい気候のためいもができにくく、最初は花を楽しむ観賞用だったといわれています。18世紀半ばになって食用として作られるようになりました。日本には17世紀に伝わり、明治時代に男爵やメークインといった品種がアメリカから入ってきました。
[用途に合わせた品種]
煮物や焼き物、揚げ物などさまざまな用途で使われるじゃがいもにも、いろいろな品種が作られています。
ポテトチップス用に油で揚げてもこげた色がつきにくいもの:ラセットバーバンク(上のイラスト左)など
でんぷんをとるための専用のもの:紅丸、コナフブキなど
煮物や揚げ物に合うもの:男爵(真ん中)、メークイン(右)など
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じゃがいもの芽や緑色になった部分にはソラニンという毒素がありますが、ソラニンが作られないようにすることで、食中毒のリスクを低減した品種もあります。
同じ野菜から作られた野菜
例1:キャベツ、 赤キャベツ、芽キャベツ、ブロッコリー、カリフラワーは、同じ野生の植物から作り出されたもの。ケールが原種と考えられていて、アブラナ科に属す野菜です。
例2:かぶ、白菜、小松菜は、地中海沿岸や中央アジアなどが原産の原種「Brassica rapa(アブラナ)」を祖先としているといわれています。
最後に
同じ野菜で違う品種のものを、ぜひ食べ比べてみてください。