食物繊維が多く、甘くてねっとりとした食感のさつまいも。含まれる糖質成分や、調理法による甘さや食感の違いについて解説します。
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さつまいもが甘くなる仕組みと温度の関係
さつまいもの甘さに関わる主な糖質成分には、フルクトース、グルコース、スクロース、マルトースがあります。なかでもスクロースとマルトースの占める割合が大きく、このうちマルトースは未加熱のさつまいもにはほとんど含まれず、加熱によって糊化したでんぷんにβ-アミラーゼという酵素が作用することで多量に作られます。
さつまいものβ-アミラーゼの働きや、でんぷんの糊化温度の関係を調べた実験結果を紹介します。さつまいもに含まれるでんぷんの量が多いほどマルトース含有率が高い、つまり甘いという傾向があるようですが、でんぷんの糊化温度と甘さの関係はどうでしょうか。
図1は、蒸したさつまいもに含まれるマルトースと、さつまいものでんぷんの糊化温度との関係を示したグラフです。試料には以下の品種を使いました(いずれも2013年産)。
・ベニアズマ(東日本の青果用主力品種。糖度は中~高)
・高系14号(西日本の青果用主力品種。糖度は中)
・タマユタカ(ほしいもの原料用主力品種。糖度は中)
・べにはるか(糖度は高)
グラフを見ると、蒸したさつまいものマルトース含有率は、でんぷんの糊化温度が高ければ高いほど少ない、という結果が読み取れます。さつまいものβ- アミラーゼは、75~85℃以上で働きが弱まると言われており、糊化温度が高いと、β- アミラーゼが働きにくくなってマルトース含有率が低くなり、甘みが減少するという関係にあるようです。
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同じ品種でも寒冷地で育ったさつまいもは、でんぷん含有率が少なかったりβ-アミラーゼの働きが低下したりする傾向にもかかわらず、マルトース含有率が高くなるという研究があります。寒い場所で育つと、でんぷんの糊化温度も低くなる傾向にあり、マルトース生成も低い温度で始まります。結果的に、温度が上がるまで糊化しにくい温暖地のさつまいもよりもマルトース含有率が高くなり、甘くなると考えられます。品種だけでなく栽培地にも注目してみると、より自分の好みにあった甘さのさつまいもがみつかるかもしれません。
加熱方法で甘さとねっとり感が違う?
同じ品種のさつまいもをより甘くして食べたい場合はどうすればよいでしょうか。
図2は、電子レンジ加熱した場合と焼き芋にした場合の、さつまいもの温度変化を示したものです。
焼き芋にすると、ゆっくり時間をかけて温度が上昇するため、β‐アミラーゼの働く時間が長くなります。その分マルトースが多く生成され、甘味が強くなるようです。一方、電子レンジ加熱では温度が短時間で急激に上昇するため、マルトースの生成量が少なく甘味が弱くなると思われます。
さつまいもの甘さや肉質は、品種による特性やもともとのでんぷん量の多さ、収穫後の貯蔵方法にもよりますが、加熱時間の長い焼き芋にすると、高糖度でねっとりとした食感になると考えられます。
加熱で食物繊維が変化、食感も変わる?
生のさつまいもを蒸し器で加熱した場合と、電子レンジで加熱した場合の食物繊維の変化を比較しました。下はその図です。蒸し器は100℃で12分間、電子レンジはさつまいもをラップに包んでガラスの容器に入れ500Wで60秒間加熱しました。
上の図が示す通り、蒸し加熱をすると不溶性食物繊維は約2倍に増加しました。電子レンジで加熱した場合も不溶性食物繊維がわずかながら増加しており、加熱することで不溶性食物繊維が増えることがわかります。
次に、加熱方法の違いによる不溶性食物繊維の保水量の変化を比較した実験を紹介します。
蒸し加熱では未加熱よりも含む水の量が減少し、レンジ加熱ではほとんど変わりませんでした。
図3と考えあわせると、蒸し加熱では不溶性食物繊維は増えますが、含む水の量は減ります。一方、電子レンジ加熱の場合、蒸した場合ほど不溶性食物繊維は増えませんが、含む水の量は蒸し加熱の約1.5倍になります。つまり、電子レンジ加熱すると保水性が高まり、しっとりとした食感を味わえると考えられます。
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●ビタミンCも含まれる
さつまいもは、りんごの4倍程度のビタミンCを含んでいるうえに(※)、加熱しても6割以上が損失せずに残ります。
※さつまいも、りんごともに皮つき、可食部100gあたり。
●さつまいもの皮の栄養
皮には、ポリフェノールの一種であるアントシアニンが含まれています。皮をむいてしまうとポリフェノールのほとんどを捨てることになるため、皮ごと調理した方がより栄養を効果的に摂取することができます(皮ごと食べる場合はよく洗ってから食べましょう)。
最後に
加熱方法で変わるさつまいもの甘さや食感の違いを、料理に生かしてください。