ふつうの砂糖を人工甘味料に置き替えると、糖尿病や肥満の治療や予防に効果があるといわれることがあります。一方で逆に人工甘味料をとることで体重が増えてしまうという研究報告も。こうしたなか、海外研究によると、長期にわたって人工甘味料をとっていると、食事の質やカロリー摂取量に関係なく、内臓脂肪や皮下脂肪が増えると報告されました。いったいどう考えるとよいのでしょうか?
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25年後の体内脂肪との関係は?
人工甘味料はカロリーがゼロであることが利点と見なされていますが、これまでの研究では、矛盾するような結果も明らかなっていました。というのも、人工甘味料の摂取量が多いとBMIの上昇や肥満のリスクが高くなるという分析結果や、細胞や動物を使った実験で人工甘味料が直接的に脂肪の蓄積をうながす可能性などが示されているからです。これに対して逆の結果も出ていて一貫していないそうです。
ただ、過去の研究はあまり長い期間の影響を調べていませんでした。そのため今回、米国の研究グループは、5000人以上を25年間追跡した大規模研究の詳細なデータを使って、人工甘味料と体内脂肪との長期的な関連性を調べてみました。
データには、研究開始時の年齢、性別、運動、飲酒などに関するアンケートへの回答とBMI、ウエスト、血糖値などの測定結果に加え、研究開始時と7年後、20年後の詳しい食事記録(たとえば、人工甘味料を使った製品であればブランド名などの情報も)が含まれます。
人工甘味料はそれぞれが別個の化合物なので、今回はアスパルテーム、サッカリン、スクラロース、ダイエット飲料と定めました。そして、25年後にCT検査を行って内臓脂肪、皮下脂肪、筋間脂肪(筋肉組織の間につくられている脂肪)の量を求め、すべてのデータがそろっていた3000人余り(研究開始時の平均年齢25歳)について、関連性を分析しました。
太るリスクもアップ
こうして研究で確認されたのが、人工甘味料の摂取量と25年後の体内脂肪の量に相関性があることです。アスパルテーム、サッカリン、ダイエット飲料を多くとっていた人ほど、内臓脂肪や皮下脂肪のほか、筋間脂肪の量すべてについて多い結果になりました。
ただし、スクラロースではこの関連性は見られませんでした。これは年齢や性別、ライフスタイル、エネルギー摂取量や食事の質などほかの要素を考慮して分析した結果です。
さらに調べたすべての人工甘味料それぞれの摂取量、そしてその合計摂取量が多いほど、BMI、体重、ウエストの値が高く、スクラロースを除いて25年間の増加量も多いとわかりました。
また、サッカリン以外のアスパルテーム、スクラロース、ダイエット飲料については、摂取量が多いと、およそ17年半の追跡期間にわたる肥満のリスクが高くなりました。
アスパルテーム、サッカリン、ダイエット飲料を長期にわたって摂取すると、食事の質やカロリー摂取量とは無関係に、脂肪の蓄積と肥満のリスクが高くなる可能性があると研究グループは結論づけています。
アスパルテームについては、WHO(世界保健機関)が最近、健康リスクについて警告を発表したばかりという点も、研究グループは指摘。過去の結果も踏まえたうえで、砂糖の代わりに人工甘味料を推奨する方針について再考すべきではと呼びかけています。
<参考文献>
University of Minnesota-led study links long-term artificial sweetener intake to increased body fat adipose tissue volume
https://med.umn.edu/news/university-minnesota-led-study-links-long-term-artificial-sweetener-intake-increased-body-fat-adipose-tissue-volume
Steffen, B.T., Jacobs, D.R., Yi, SY. et al. Long-term aspartame and saccharin intakes are related to greater volumes of visceral, intermuscular, and subcutaneous adipose tissue: the CARDIA study. Int J Obes (2023). https://doi.org/10.1038/s41366-023-01336-y
https://www.nature.com/articles/s41366-023-01336-y