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炭水化物や脂質を減らす効果は男女で違う? 名古屋大学の研究で意外な発見

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低炭水化物

低炭水化物、いわゆるローカーボ食や脂質制限は、減量や血糖値の改善につながる方法として広がりつつあります。しかし、このたび、日本人を対象とする研究から、長期的な寿命への影響が男女で異なるかもしれないと報告されました。それは男女で正反対になるという意外な結果です。

監修 : 星 良孝 <ステラ・メディックス>

ステラ・メディックス代表取締役社長 獣医師/ジャーナリスト
専門分野特化型のコンテンツ創出を事業として、医療や健康、食品、美容、アニマルヘルスの領域の執筆・編集・審査監修を担っている。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BP社において「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年に会社設立。YouTubeステラチャンネルでもヘルスケアの話題を発信。
YouTube:https://youtube.com/@stellach

Contents 目次

極端な制限で死亡リスク上昇?

健康的な食事

炭水化物や脂質を制限すると、短期的には健康効果が見られますが、長く続けた場合に寿命にどんな影響があるのか、まだ明らかではありません。

最近の欧米の研究では、炭水化物と脂質を極端に制限すると死亡リスクが高くなることが示され、関心が高まっているそうです。しかし、日本を含めて炭水化物の摂取量が比較的多く脂質の摂取量が少ない東アジアにおける関連性については、研究があまり進んでいません。

そこで今回、名古屋大学など日本の研究グループは、日本で行われている追跡研究の参加者から35〜69歳の8万人以上(およそ男性3万5000人、女性4万6000人)のデータを使って、炭水化物および脂質の摂取量と死亡リスクとの関連性を分析してみました。死亡リスクは、死因によって(すべての原因、がん、心臓および血管の病気)分けて調べました。

食事に関するアンケート回答から、炭水化物と脂質の1日の摂取量を推定し、1日の総エネルギー摂取量に占める割合を出して、およそ9年間の追跡期間中に発生した死亡との関連を分析しました。炭水化物の質(ご飯、パンなど精製されたものか、加工が最小限のものか)と脂肪の質(飽和脂肪酸か不飽和脂肪酸か)も見て、食品の質による影響も調べました。

脂肪の質によっても男女差

脂質が高い食事

こうして研究で確認されたのが、炭水化物と脂質のいずれについても男女で逆の結果が見られることです。

まず炭水化物については、男性では摂取量が少ないと死亡リスクが上がり、女性では摂取量が多いと死亡リスクが上がりました。

炭水化物の摂取量がエネルギー摂取量の50〜55%の場合を基準とした場合、男性ではローカーボ(40%未満)のグループで全死亡リスクが59%高くなり、がんによる死亡リスクが48%高くなりました。この死亡リスク上昇傾向は、精製された炭水化物、または非精製の炭水化物という炭水化物の質を考慮しても同じでした。

女性では、追跡期間が5年以上の場合、炭水化物の摂取量が多い(65%以上)グループで全死亡リスクが71%高くなり、がん死亡リスクも同様の傾向が見られました。女性では、炭水化物の質ごとに分析すると、リスクが上昇する関連性は明確には認められませんでした。

脂質についても、摂取量が多いと男性では死亡リスクが上がり、女性では死亡リスクが下がるという逆の結果。男性では、脂質の摂取量がエネルギー摂取量の20〜25%の場合を基準とすると、摂取量が多い(35%以上)グループでがん死亡リスクが79%高くなり、脂質の摂取量が増えると心臓および血管の病気による死亡リスクが高くなるという関連性が見られました。また、不飽和脂肪酸の摂取量が少ないと、死亡リスクが上がることもわかりました。

女性では、脂質の摂取量が増えると、全死亡とがん死亡のリスクが下がる傾向が見られました。脂肪の質で見ると、飽和脂肪酸の摂取量が増えると死亡リスクが下がるという結果に。

今回の結果から、炭水化物と脂質の摂取については、短期的な効果と長期的な影響との間に矛盾が見られ、極端な制限は寿命に影響を与える可能性があると見られました。炭水化物や脂質の制限はすべての人に適しているわけではない可能性があり、食事バランスが重要なのかもしれません。

<参考文献>

Extreme dietary habits for carbohydrates and fats affect life expectancy: findings from a large-scale cohort study in Japan
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result-en/2023/09/20230901-01.html

Tamura T, Wakai K, Kato Y, Tamada Y, Kubo Y, Okada R, Nagayoshi M, Hishida A, Imaeda N, Goto C, Ikezaki H, Otonari J, Hara M, Tanaka K, Nakamura Y, Kusakabe M, Ibusuki R, Koriyama C, Oze I, Ito H, Suzuki S, Nakagawa-Senda H, Ozaki E, Matsui D, Kuriki K, Kondo K, Takashima N, Watanabe T, Katsuura-Kamano S, Matsuo K; Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort (J-MICC) Study. Dietary Carbohydrate and Fat Intakes and Risk of Mortality in the Japanese Population: the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Study. J Nutr. 2023 Aug;153(8):2352-2368. doi: 10.1016/j.tjnut.2023.05.027. Epub 2023 Jun 2. PMID: 37271417.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0022316623721986

Are carbohydrate and fat intakes associated with risk of mortality among the Japanese population?
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_E/research/pdf/The_230714en.pdf

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