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ダイエット中の大きな勘違い! 断食、朝食抜き…空腹の時間が長過ぎると筋肉が減る!?【医師&フィットネストレーナーの血糖値×筋肉トーク1】

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朝食のイメージ

SNSの総フォロワー数が30万人を超える “血糖おじさん”こと糖尿病専門医の薗田憲司先生は、医師という立場を超えてトレーニングの専門家と交流し、現場のリアルな声を聞いて学んでいるのだそう。そんな薗田先生が「健康的にボディメイクしたいFYTTE読者のために対談したいのはこの方!」とオファーしたのが、フィットネストレーナーの杉崎宏哉さんです。じつはボディメイクに深く関係している“血糖値と筋肉”の関係について、2人に語っていただきました。

Contents 目次

40代からのダイエットは運動で筋肉を育て、血糖コントロール

筋トレ女子のイラスト

薗田僕にはいつか「医療」と「運動」をつなげたいという夢があり、いろいろなトレーナーさんとSNSでつながって友人になり、お会いして食事をしたりしているんです。その中で、血糖値や生活習慣病予防の知識がすごい!と思ったのがフィットネストレーナーの杉崎宏哉さんです。

杉崎ありがとうございます。薗田先生は医師として専門知識を持ちながら、お話しすると気さくで柔軟性があり、人間的にも魅力が高いですよね。こう見えて、昔はブレイクダンスをやられていたりとか。

薗田そうなんです、大学時代からブレイクダンスをしていて腹筋が割れていました(笑)。今は時間があるときに自宅やジムでトレーニングをしています。最近は開業準備で忙しくてサボりがちですが(笑)。宏哉さんは、フィットネストレーナーで現役のフィジーク選手でもあり、ボディコンテストで優勝されたこともあるすごい方なんです。でも、クライアントさんは“筋トレガチ勢”より、40代以上のトレーニング経験のない方が多いんですよね?

杉崎はい。僕がトレーニングや食事管理のレッスンをしているクライアントさんは40代以上の方が中心で、60代の方もいらっしゃいます。ダイエットや健康増進のために運動をはじめたいという方が多く、指導に活かすために医師など専門家とお話ししたり、論文を読んだりして勉強しているんです。僕のモットーは「ネバトレ(Never too late)」。これは「遅過ぎることはない」という意味で、適切な食事、正しいフォームでトレーニングをすれば90歳からでも筋肉は成長させられます。

薗田筋肉量は加齢とともに減少していくので、特に40代からのダイエットは食事だけでやせようとせず、筋トレなどで筋肉を刺激して育てることが大切だと思います。筋肉量を増やすことは血糖コントロールになり、将来の健康にもつながるんです。僕は患者さんに「薬になると思って運動してください」とお伝えすることがあるのですが、運動は血糖コントロールダイエットの最高のアクションでもあります。

 

ダイエットで筋肉を減らさないために知っておきたい「糖新生」

ファスティングのイメージ

薗田以前お話ししたとき、宏哉さんは「糖新生」のことも知っていて驚きました。糖新生は空腹時に血糖値が下がって血中の糖が不足したとき、筋肉のたんぱく質を分解して血糖が補われる体のしくみ。つまり、血糖値が下がっている空腹状態が長時間続いたり、空腹のまま運動したりすると、糖新生が起こって体脂肪だけではなく筋肉が減りやすいわけです。宏哉さんは、クライアントさんに食事やトレーニングの指導をするとき、血糖値や糖新生についても説明しますか?

杉崎はい。運動の習慣がある、ないに関わらず、筋肉を育てて健康な体をつくるために「血糖値を意識する」のは大前提だと思います。糖質に偏った食事は高血糖になり中性脂肪が増えやすくなること、また、極端な食べないダイエットは糖新生で筋肉が減りやすいこともお伝えしています。

薗田この前、宏哉さんと食事をしたとき、長年の「断食」のくり返しでやせにくくなることについて熱く語っていましたよね。

杉崎そうなんです。トレーニングをしてもなかなか結果につながらない40代以上の方にお話をうかがうと、断食(ファスティング)をくり返していたケースがとても多いんです。ある女性は、最初は1年に1、2回だけ断食していたのが、だんだん毎月になり、さらに毎週のように断食するようになったそうです。でも、年齢を重ねて断食してもやせにくくなり、お腹周りに脂肪がついていることに悩まれていました。

薗田断食といっても、食べ過ぎた後、摂取カロリーの調整のために次の食事の糖質や脂質の量を軽く減らすのはいいと思うんです。でも、運動で筋肉を刺激せず、極端な食事制限(3食抜くなど)だけでやせようとすると、糖新生が起こって筋肉がどんどん減っていってしまうんですよね。

杉崎:はい。食事量を減らして筋肉を減らすのは簡単ですが、食事管理とトレーニングで筋肉を育てて増やすのは時間がかかります。断食はすぐに体重が減るので効果があるように思われがちなのですが、脂肪だけではなく筋肉も減るので、長期的に見ると代謝が落ちて消費エネルギーが減り、以前と同じ量を食べても太りやすい体になってどんどん損をしているんです。

薗田その断食をくり返してやせにくくなっていた女性は、宏哉さんのアドバイスでどう変化したんですか?

杉崎朝昼晩3食とってトレーニングをし、10㎏の減量に成功して「食べてやせられるなんて」と喜ばれていました。

 

「早めの夕食」でほどよい空腹時間をつくれば、朝昼晩食べても太りにくい

書籍P138‐139

薗田僕は、著書の『“血糖値”を制して脂肪を落とす!』(Gakken)の中で、夕食から翌朝の朝食まで、12時間ほど軽い空腹時間をつくることをおすすめしています。起床後の空腹時は血糖値が下がっていますが、朝食を抜くと昼まで血糖値が下がりぎみになって筋肉が減りやすくなり、さらに、空腹状態で昼に糖質をたくさんとった場合、血糖値スパイク(血糖値の急上昇・急降下)が起きて脂肪がつきやすくなってしまいます。だから、1日3食とったほうが血糖コントロールダイエット的には有利なんです。

杉崎本当に同感で、僕も実践しています。僕の場合は19時ごろに夕食をとり、その後は就寝まで食べずに空腹を感じたら無糖の炭酸水を楽しみ、翌朝7時か8時に朝食をとるのが習慣です。“早めの夕食”さえ心がければ、ほどよい空腹状態をつくれるんですよね。

薗田そうですね。長時間の断食をして極端な飢餓状態をつくらなくても、夕食から翌朝の朝食まで12時間ほどの軽い空腹状態をつくることで脂質代謝のエンジンが回り出し、少量のケトン体がつくられて脂肪燃焼が促されます。宏哉さんは、クライアントさんに朝食をとるように指導されていますか?

杉崎はい。でも最初にカウンセリングをすると、朝食をあまり食べていない方が半数ぐらいいるんです。

薗田そんなにいるんですね。朝は忙しいから朝食を抜いているんですか?

杉崎お話を聞くと21時、22時ごろに夕食をとっていて「朝は食欲がなくて食べられない」と。できるだけ早めに夕食を終わらせるようにすると、おなかが空いた状態で起きられるようになるので、みなさん朝食を食べられるようになっていくんです。

 

「朝たんぱく質」で筋肉の減少を抑え、食欲コントロール

書籍P16‐17

薗田朝に何を食べるかも血糖コントロールには重要ですね。朝食は「おにぎりだけ」「パンだけ」など糖質に偏った軽食になりがちなのですが、起床後の空腹時にそれだけ食べると血糖値を急上昇・急降下させます。だから僕は、朝食にたんぱく質の食材をプラスして最初に食べる「朝たんぱく質」をすすめているんです。

杉崎:僕も「朝たんぱく質」はとても大事だと思います。朝昼晩の食事でたんぱく質を均等にとったほうが血中のアミノ酸濃度が保たれて筋肉の分解を抑えられます。朝食を抜いてしまうと、たんぱく質をとるチャンスが昼以降しかなくなるので、朝たんぱく質が大事ですね。

薗田たんぱく質をとるとGLP-1という食欲を抑えるホルモンが出るといわれているのですが、僕自身も食欲抑制の効果を実感しています。

杉崎クライアントさんは、スイーツなど甘いものが好きな方もいるのですが、たんぱく質をしっかりとることで、甘いものが食べたいという欲求が減る方もいるようです。

薗田宏哉さんは、どんな朝食メニューをおすすめしていますか?

杉崎ダイエットが目的の場合、理想をいうと「液体」より「固形」の食べ物がいいんです。「固形」の食べ物をゆっくりよくかんで食べたほうが、消化の速度がゆるやかになってDIT(食事誘発性熱産生)のエネルギー消費量のアップが期待できます。主食は、腸内環境を整える食物繊維がとれる全粒穀物の玄米、雑穀のごはんやオートミール、筋肉の材料になるたんぱく質は、卵を2個使ったオムレツや納豆が手軽です。和定食なら玄米ごはん、良質なたんぱく質と脂質がとれる魚のおかずの組み合わせでもいいですね。

薗田僕は「納豆卵かけごはん」や「オートミール卵がゆ」などを朝食で食べることが多いです。寝坊した朝はプロテインにしていて、シナモンデニッシュ風味のプロテインにりんご酢、イヌリンを加えて飲んでいます。アップルパイ風になっておいしいんです。

杉崎いいですね! 朝食を食べる習慣が大事なので、食欲があまりないときは固形のものにこだわり過ぎず、プロテインやギリシャヨーグルトもいいと思います。僕は、ギリシャヨーグルトにチョコレート風味のプロテインパウダーを入れて混ぜ、ブルーベリーをのせて食べるのが好きです。

薗田自分の食の好みによって定番の「朝たんぱく質」のメニューを決めるといいですね。筋肉が1㎏増えると、消費エネルギーが1日50kcalほど増えるといわれています。少しのようですが毎日積み重ねれば大きな量ですよね。

杉崎はい。1日50kcalの消費エネルギーでも、1か月(30日)なら1500kcal、1年(365日)なら1万8250kcal。イベントのときは、どうしても食べる量が増えると思いますが、筋肉量が多い人はエネルギー消費量が多いので、食べることを楽しみながら体重を維持できます。

薗田次回は、イベントなどで食べる機会が増えるときのボディメイク、食事法について、フィットネストレーナーの宏哉さんとお話ししていきます。

 

取材・文/掛川ゆり

薗田先生の著書『“血糖値”を制して脂肪を落とす!』(Gakken)には、ハードルが高い食事法ではなく、実生活に落とし込みやすい簡単な血糖コントロールの行動がたくさん紹介されています。 気になる人はこちらもチェックしてみてください。

書影

【プロフィール】

薗田憲司(血糖おじさん)

薗田先生顔写真

日本内科学会 糖尿病内科認定医。日本糖尿病学会 糖尿病専門医。そのだ内科糖尿病・甲状腺クリニック 渋谷駅道玄坂院院長。日本医科大学卒業後、東京臨海病院初期勤務、東京都済生会中央病院勤務。年間4000件以上の外来を担当。糖尿病患者の父を持ち、自身も学生の頃より食事改善を実践。外来では患者1人にかけられる時間が限られているため、多くの糖尿病患者やダイエットに悩む人に役立つ情報を発信したいとの思いからInstagramで情報発信を始め、SNS総フォロワー32万人を突破(2023年12月時)。血糖値とダイエットの関係性や食事のアドバイス、糖尿病の最新事情などを発信している。
https://www.kettou-ojisan.com/
Instagram:@kettou_ojisan

 

杉崎宏哉さん

杉崎先生

フィットネスインストラクター、ダイエットコーチ、NESTA全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会公認トレーナー、ACCAスポーツ栄養スペシャリスト、NESTA Functional Anatomy(機能解剖学)スペシャリスト。40歳で重度の腰痛を患い、体のしくみについて学びはじめる。結果、腰痛は手術なしで寛解。同じ悩みを持つ人を助けたいという思いから、フィットネストレーナーとなる。また、母親がひざ痛で長年苦しんでいる姿を見て、足腰の健康こそ人生を楽しむには不可欠だと強く思い、指導方針にも影響を与えている。モットーは「Never too late(遅過ぎることはない)」で、何歳からでもキレイでかっこよく健康的な体に変えられることを伝えている。現役フィジーク選手としても活躍し、2020年度はGOLD’S GYM ジャパンカップ・メンズフィジーク・マスターズ172cm超級優勝に輝く。
YouTube:ネバトレフィットネス〜never too late fitness〜
Instagram:@nebatore_fitness

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