「ホームキャニング」とは、瓶などの容器に食材を入れて密閉したもののこと。昔から食材を長く保存できるよう使われてきた調理法です。常備菜を作り置きしておくことで日々の食卓が彩り豊かになり、食事の準備を手軽に済ませることができると、近年、保存食作りにはますます注目が集まっています。
保存食というと、梅干しやドライフルーツなど、手間がかかるというイメージを持つ人も多いでしょう。でも実は、調理工程が少なく簡単に仕上がるシロップやピクルスなどもあるので、覚えておくととても便利。時間に余裕があるときに作っておけば、来客があったときにすぐ出せる上、持ち運びしやすい瓶詰めだから、ホームパーティのおもたせにもぴったりです。
それでは保存食の作り方や、保存食をアレンジしてできるレシピを見ていきましょう。
Contents 目次
保存瓶の準備
保存する瓶は密閉できるものを用意する
瓶として売られているものの中には、蓋を閉めても完全密閉できない瓶があります。密閉できないと、食品が酸化したり雑菌が入ったりして傷みやすくなり、保存期間は短くなります。密閉できない瓶には、注意書きに「密閉できません」と書いてあることが多いので、よく見て購入しましょう。
写真の瓶のように、二重で蓋が閉まるダブルキャップタイプのものは、脱気しやすく完全密閉できるので、長く保存したいときに向いています。
下準備のポイント
保存瓶の消毒は念入りに!
家庭で作る保存食は、どれくらいもつのか、期間を明確に示すことができません。それは殺菌の仕方や保存の状態によって、期間にかなり差が出てしまうためです。
完全に滅菌できている場合、ピクルスだと1年はもつと言われていますが、家庭での殺菌では1〜2週間程度だと思っておきましょう。また、どんなにおいしいものを瓶に詰めても、衛生状態によっては保存しているうちに腐敗してきたり、カビが生えたりしてしまいますから、保存食作りに使うものはすべてしっかり殺菌するようにしましょう。
1.瓶を洗剤でよく洗う
保存食を入れる瓶は洗剤で隅々までしっかり洗います。前に入れていた食品の油分などが残っていると、そこから雑菌が繁殖してしまいますから、口の部分や外側もしっかり洗いましょう。蓋や、保存食作りに使う菜箸、トングなども洗っておきます。
2.熱湯殺菌をする
ぐらぐらと湧いているお湯のなかに瓶と蓋を入れて、煮沸消毒します。瓶がすっぽり入る鍋がなければ、全体が熱湯に浸かるようにトングで瓶を転がしながら消毒しましょう。5分間茹でたらトングで挟んで取り出し、瓶をさかさまにしてペーパータオルの上で冷まして。乾いたら、まだ瓶が温かいうちに食品を入れられるようにします。
初心者でもできる保存食レシピ
茹でるだけでできるヒヨコマメのピクルス
瓶の準備ができたら、実際に保存食を作ってみましょう。ひとつめは、ヒヨコマメを白ワインビネガーとスバイスに漬け込んだピクルスです。甘酸っぱくてスパイシーなヒヨコマメは、そのままでもお酒のおつまみになりますし、クリームチーズと和えてクラッカーにのせたり、白身魚やタコなどと混ぜてカルパッチョのようにしたり、さまざまな使い方ができます。
【材料(320ml瓶1本分)】
ヒヨコマメ(水煮) 200g
白ワインビネガー 50ml
水 150ml
ローリエ 1枚
アニスシード 1個
クミン(ホール) 小さじ1/2
にんにく(スライスする) ひとかけ
鷹の爪 1本
砂糖 40g
塩 2g
粒黒胡椒 小さじ1/2
【作り方】
1. 鍋に材料をすべて入れて沸騰させる。沸騰してから3分経ったら火を止める。
2. 熱々のままの1を瓶に入れ、一度しっかり蓋を閉める。
3. 1分たったら蓋を開け、瓶の上部に浮いてきた空気を逃がして蓋を閉める。
一度すべての材料に火を通すことで、保存しやすくなります。また、熱々のピクルス液を瓶のフチぎりぎりまで入れることでしっかり脱気し、真空状態を作りましょう。詰めたあとはそのまま室温で冷まし、完全に冷えたら冷蔵庫で保存します。火傷に気をつけて手早く作業しましょう。
【アレンジ】ヒヨコマメピクルスのコールスロー
【材料(2人分)】
じゃがいも 1個(200g)
キャベツ 3枚
とうもろこし 1/2本
塩 大さじ1/2
ヒヨコマメピクルス 50g
ピクルス液 大さじ3
胡椒 少々
【作り方】
1. じゃがいもは皮をむいて一口大に切り、柔らかくなるまで茹でる。
2. キャベツは粗めの千切りにし、塩を入れて揉んで5分ほど置く。しっかり絞って水分を切る。
3. とうもろこしは皮をむいてラップにくるみ、700wレンジで3分加熱する。包丁で実だけ外す。
4. ボウルに1、2、3とヒヨコマメピクルスとピクルス液を入れて合える。皿に盛ったら胡椒をかける。
おやつにぴったり! みかんのシロップ漬け
保存食となるシロップには、二通りの作り方があります。一つ目は、果物などと砂糖を入れてそのまま室温に放置しておき、自然に砂糖が溶けていくのを待ってシロップにしていく方法です。もう一つは、果物などと砂糖を煮て作る方法。前者は入れる砂糖の量が多いので長期保存に向くのですが、砂糖が溶けるまでに時間がかかり、その間に発酵してしまったりカビてしまったりする可能性があります。後者は、砂糖の量によって長期保存に向かない場合もありますが、手早く作ることができて、甘みを調節することができます。
ここでは、後者の作り方でみかんをシロップ漬けにしてみましょう。缶詰めでおなじみの味にレモンを加えることで、爽やかな風味を感じるレシピです。また、レシピ中で使用している砂糖は、シロップ液の透明度を保つために上白糖を使っています。お好みで甜菜糖やきび砂糖に変えても、おいしく作ることができます。
【材料(450ml瓶)】
みかん 3個
砂糖 80g
水 500g
レモン汁 大さじ2
レモン 輪切り1枚
【作り方】
1. みかんの皮をむく。白い筋が気になる場合は、柔らかいスポンジで表面をこすりながら洗う。
2. 鍋に砂糖と水を入れて沸騰させ、強火で5分加熱する。
3. 5分経ったらみかんを入れて、強火で3分間熱し、火を止めたらレモン汁を入れる。
4. 熱々のままの3を瓶に入れたら、輪切りにしたレモンを1枚入れて蓋を閉める。1分経ったら蓋を開け、瓶の上部に浮いてきた空気を逃がしてから蓋を閉め直す。
【アレンジ】みかんシロップで作るモヒート風ドリンク
【材料(1杯分)】
みかんシロップのみかん 1個
みかんシロップ液 大さじ2
ライム 1/4と、輪切りにした1枚
氷 3個
スペアミント 3g
炭酸水 200ml
【作り方】
1. みかんシロップのみかんとシロップ液、輪切りにしたライムをグラスに入れる。
2. ライムを縦1/4に切って、更に半分に切ったものを1に絞る。残りの半分は、皮と実の間に包丁を入れ、グラスの縁に飾る。
3. 氷、スペアミントを入れたら炭酸水を注ぐ。ミントやみかんをマドラーで潰しながら飲む。
ピクルスやシロップは、さまざまな野菜や果物でつくることができます。たとえばピクルスは、ミニトマトやみょうが、オクラなどをカットせずにそのまま漬け込むのがおすすめ。残りやすい人参やキャベツなどの野菜は、千切りにして瓶にぎゅうぎゅうに詰めて保存しておくとよいでしょう。買いだめした食材は新鮮なうちに保存食にしておくことで、無駄なく使い切ることができます。シロップは、皮をむいたデラウェアやすもも、あんず、硬い柿など、季節によってさまざまな果物で楽しめます。
週末のちょっとした時間を利用して、忙しいときや疲れているときの食事を支える保存食作りにぜひチャレンジしてみてください。
取材・文・レシピ=吉川愛歩 撮影=矢部ひとみ 構成=Neem Tree
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