日本では「疲れ目にいい」「目のアンチエイジング」という印象のブルーベリー。森の恵みが豊かなフィンランドでは、ブルーベリーの一種「ビルベリー」を始めとするベリー類を森で摘んできて食べることが多いそう。北欧ならではのブルーベリー事情をご紹介します。
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森にはたくさんのベリーが!「自然享受権」とは?
フィンランドは、国土の半分ほどが北極圏に位置し、秋から春まで作物の露地栽培は難しくなります。農作物も保存のきく穀物や根菜は昔から自給率も高いのですが、葉物や果物(りんごは育ちます)も輸入が主。
おもしろいのが、食べもののカテゴリーです。日本では野菜、果物、となるところ、こちらでは野菜、果物、ベリー類と、なんとベリーが独立しているのです。
ベリーは庭で栽培する灌木(ラズベリー、ブラックカラントなどのスグリ類、シーバックソーン・ベリー、畑に植えるいちご…)もありますが、多くは野生。自然享受権という、誰もが国有林でも私有林でも森に入ってきのこやベリーを採取していい、という権利が保障されているのです。ただ石を持ち帰ったり木を切り倒したりすることは禁じられているので地面から簡単に取れるものという意味でベリーやきのこなどがそれにあたります。
森からは野いちご、リンゴンベリー、クランベリー、クラウドベリー(北部やラップランドで)、とありますが、もっともメジャーなのがブルーベリーの一種であるビルベリー。
摘んだビルベリーは保存食に
栽培種のブルーベリーは青色で粒も大きめですが、野生のビルベリーは小粒で色も黒に近い紺色。色が濃いほど抗酸化作用があるアントシアニンも豊富です。灌木も30cmほどと低く、腰をかがめてベリーピッカーと呼ばれるちり取のような専用の道具でばっさばっさとベリーをすくい取り、バケツに何杯も採集したらそれを自宅に持ち帰り、葉っぱなどのごみを取り除きます。
これらが次のシーズンまでの大事なビタミン源のひとつとなるので、下処理をしたらそのまま生食もいいですし、余ったものは容器で冷凍して毎朝の朝食時、ヨーグルトやオートミールにかけたりもします。また、砂糖を加えて煮詰めて、ジュースやジャムといった保存食にも使われています。
フィンランドの学校で学ぶブルーベリーパイ
ビルベリーはほんのり甘酸っぱいので生食にも適していますが、筆者が最も好きなビルベリーのレシピは夫が中学校の家庭科で習ったブルーベリーパイ。シーズンの8〜9月にお出しするとどのお客様も本当に喜んでくださいます。
またビタミンは豊富なのに、カロリーの低いベリー類は女性にもとてもありがたい食材。フィンランド人の場合はお店から買うよりも、週末に長靴をはいてバケツやバスケットをもって森にくり出して、家族や友人と一緒にアウトドアとしてそのプロセスも楽しむ人が多いんです。おいしい空気を吸って、おいしいベリーもたくさんとれる一石二鳥の余暇の過ごし方ともいえるでしょう。
写真・文/セルボ貴子、ホリ・コミュニケーション