ダイエットや美容を目的に、ごはんやパンなどの炭水化物を控えている人も多いはず。またこうした低炭水化物の生活は、血糖値を下げるなどして、メタボリック症候群を防いでくれると聞いたことがある人もいるかもしれません。米国の研究グループはそればかりではなく、がんを防ぐような効果もあるかもしれないと報告しています。
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低炭水化物はいい? 悪い?
日本でも炭水化物を控える食事が人気ですが、米国でも「ケトジェニックダイエット」などとして、炭水化物を抑えた食事を実践する人が増えています。
1970年に、米国の医師、アトキンスが炭水化物を大幅に抑えた食事を提唱したのが始まり。ダイエットによいとして近年、広く一般に浸透してきました。
大幅に炭水化物を抑えると、体が脂肪を分解してエネルギーとして使い始めるため、体重が減るとされます。2~4日にわたって1日の炭水化物を20~50gに抑えると脂肪の利用が始まるという原理です。一方、炭水化物を減らすと、たんぱく質や脂肪の摂取が増え過ぎるとの批判もありました。たんぱく質をとり過ぎたり、質の悪い脂肪を含んだ加工食品を食べ過ぎたりして、健康に悪いというのです。
こうしたなか、低炭水化物は血糖値が下がるので糖尿病によいとか、脳神経の病気にとってメリットがあるという報告もあり、病気を減らしてくれる可能性が示唆されています。最近はがんに対しても効果がありそうだという研究結果が報告されました。
がんが大きくなるのを抑える可能性
今回、研究報告をしたのは米国テキサス大学ダラス校の研究グループ。炭水化物を抑えることで、血糖値を下げる点に着目したものです。血糖値が下がると、糖尿病などを防ぐというばかりではなく、糖を栄養として大きくなる「がん」が大きくなることを防げると考えられるのです。
研究グループでは、まず動物実験を行って、肺がんが大きくなるのを防ぐ効果を確認しました。研究グループによると、がんを小さくすることはなかったものの、大きくなるのを防ぐことができたことを実験から証明。この中で、どんなタイプのがんに対しても効果があるのではなく、一般的ながんのタイプのひとつである「扁平上皮がん」を抑える効果がありそうだということを発見しました。
そこで、研究グループでは192人の肺または食道に扁平上皮がんを患っている人を対象に、血糖値の高さががんの悪化とどのような関係があるのかを分析したのです。その結果、血糖値が高い人はがんが悪化しやすい傾向があることを確認しました。
これは炭水化物を減らす食事そのものの効果を調べたわけではありませんが、血糖値を低く保つことが、がんにとってどのような意味をもつのかを示唆する結果となりました。
まだ研究の途上ではありますが、今後、低炭水化物食の効果はさらに注目されそうです。
<参考文献>
Biologists’ Preclinical Work Suggests Keto Diet Has Anti-Cancer Effect
https://www.utdallas.edu/news/research/preclinical-research-suggests-keto-diet-has-anti-cancer-effect/
Ketogenic diet: Is the ultimate low-carb diet good for you?
https://www.health.harvard.edu/blog/ketogenic-diet-is-the-ultimate-low-carb-diet-good-for-you-2017072712089
Ketogenic Diets and Cancer: Emerging Evidence
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6375425/