疲れたときに甘いものを食べて、エネルギーにできるのは20代まで。35歳からは体のエネルギーを生み出す仕組みが変化していきます。その変化に応じて、食行動も変えていくと太りにくくなります。
今回は作業療法士の菅原洋平さんの著書『ストレス0(ゼロ)ダイエット』(詩想社)から、35歳からの太らない食べ方についてお伝えしていきます。
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疲れをとるために食べても、さらに太るだけ
疲れたときにエネルギーチャージとばかりに、甘いものやカロリーの高いものを食べていませんか。
「じつは、40歳あたりを境目に、私たち人間はカロリーの高いものや甘いものを食べても、それがエネルギーにならない仕組みになっています」と菅原さん。
その理由は代謝にあります。
私たちの体には食べ物からエネルギーをつくる仕組みが2つ備わっており、それは「解糖系」と「ミトコンドリア系」といわれるものです。
「解糖系は、糖質、脂質、たんぱく質という3大栄養素のうち、糖質だけを使ってエネルギーを作ります。糖質だけでエネルギーを作ると、すぐに大きなエネルギーが手に入りますが、長時間エネルギーを作り続けることができません。それに対してミトコンドリア系は、3大栄養素すべてを使ってエネルギーを作り出します。ミトコンドリアとは、細胞内に存在する小器官です。解糖系では、ブドウ糖がミトコンドリアにたどり着く前に使われてしまいます。すぐに燃えてすぐに消える感じです」
“疲れたら甘いものを食べる”というのは解糖系の行動です。
一方ミトコンドリアは、解糖系で使われずに余った脂肪もたんぱく質もしっかりエネルギーにするので、体のなかの使える資源を余すことなく使い切ります。
ミトコンドリア系がしっかり使えていると、長期的にエネルギーを作り続けることができ、何より、栄養素を余分に蓄えて体重を増やすことがないのです。
35歳以降は「持続力」で勝負
エネルギーを作る仕組みは、年齢によって大きく変化していきます。
「20代までは解糖系が優位に使われますが、40歳以降ではミトコンドリア系が主要になります。この切り替えは30歳代中盤あたりから徐々に起こるので、それに合わせて私たちも行動を変えていかなければなりません。疲れたら、自分へのいたわりやご褒美として食べる、体にとってこのような食べ方に意味があるのは、20代まで。30代中盤以降は、糖質を摂取しても解糖系は機能しないので、糖質をとる量が増えていなくても、血糖値が上がってしまいます」
仕事においても20代からの変化で、「がんばりがきかなくなった」「休んでも回復しない」と感じていることが多いと思いますが、解糖系を使う働き方はホメオスタシスの振り幅がとても大きいとのこと。
35歳を過ぎたら、瞬発力よりも持続力を活用するように行動を変えるといいそうです。
今すぐできる!ミトコンドリアを増やす姿勢
中年以降、ミトコンドリアにしっかり仕事をしてもらうために、ミトコンドリア自体を増やすというのもひとつの方法です。
「ミトコンドリアは、筋肉では赤筋、脂肪では褐色脂肪細胞に存在しています。赤い筋肉は赤筋と呼ばれて、持続力を発揮します。別名は遅筋です。ずっと泳ぎ続ける赤身の魚は赤筋のみを持っています。私たちが効率よく代謝を行うには、この赤筋を増やせばよい、ということになります。赤筋は持続力の筋肉なので、体の表面にあるムキムキの筋肉ではなく、体の中心部にある姿勢を維持する筋肉です。特に、骨盤内や肩甲骨の周りに集中しています」(菅原さん)。
姿勢を正して座っているだけで、この赤筋を使うことができます。デスクワークのときもぜひ意識して使ってみましょう。
〈赤筋が使われる座り方〉
1 まず、両足の裏を地面につけます
2 肩を耳に近づけるように首をすぼめて、その肩を背中側にギューッと引きます
3 そこでストンと力を抜いて肩を下ろします
4 肛門をぐっと締めます
「これが、赤筋のミトコンドリアを使い、体内の脂肪をしっかりエネルギーに替えることができる姿勢です。もしかしたら、いつもより肩の位置がうしろに感じられるかもしれませんが、これが本来の肩の位置です。うしろに感じられるとしたら、それだけふだんから、肩のポジションが前になってしまっているのです」
35歳以降は「疲れたら甘いものを食べる」ではなく、ミトコンドリア系を使うようにすると、太りにくい生活をすることができます。
体の変化に合わせ長い目で見て、瞬発力よりも持続力を意識すると疲れにくい体が手に入ります。
文/庄司真紀
菅原洋平(著)『ストレス0(ゼロ)ダイエット』(詩想社)