睡眠不足だと、なぜかドーナツやピザなど高カロリーで高脂肪の食べ物がほしくなる──。そんな経験はありませんか? どうやらそれはよくあることで、睡眠が足りないと嗅覚と脳がはたらく仕組みが変わってしまうから、という研究報告がありました。脳がおいしそうなにおいに抵抗できなくなるそうなのです。
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睡眠不足だと脳に変化?
睡眠不足だとストレスがたまり、イライラした気持ちから食べ過ぎてしまう。そうした経験は多くの人にあるかもしれませんが、研究からも裏づけられてきました。研究によると、睡眠が足りないと砂糖と脂肪の多い食べ物を多くとりがちになると明らかになっているのです。
今回、米国の研究グループが注目したのは、睡眠不足により、食欲をつかさどる脳の働きが変化するのではないかということ。同じように、においを感じる嗅覚も変化すると考えました。
そこで、こうした脳などの働きに関係している「脳内麻薬」とも呼ばれるエンドカンナビノイドの働きにも注目。詳しく研究を進めました。体内で自然に作られる脳内麻薬は、快感に関わり、食欲から脳などの器官の働き、免疫系など体の多くの機能の調節に関わっていることが知られています。
今回の研究では、29人の男女を対象に、ふつうに眠った翌日と4時間しか眠らなかった翌日の2回、個人に合わせた適切な食事を朝昼晩とってもらったうえで、ドーナツやポテトチップスなど高カロリーの食べ物を軽食として用意して自由に食べてもらい、何をどれくらい食べたか調べました。同時に、さまざまな食べ物のにおいと食べ物以外のにおいを嗅いでもらいながら脳のMRI検査を実施。嗅覚と脳の働きを調べ、血液中のエンドカンナビノイドの量も調べました。
においの感じ方が変わる
その結果、わかったのは、睡眠不足の翌日は確かに食べるものが変わるという事実です。睡眠が短いときの参加者は、軽食として出されたドーナツやポテトチップスなどの高カロリーの食べ物をたくさん食べていたのです。また、睡眠不足の翌日は血液中のエンドカンナビノイドも増えていたばかりか、その値は高カロリーの食べ物の増加と関連していました。
脳のMRI検査では、鼻からの刺激を最初に受け取る脳の部分(「梨状皮質(りじょうひしつ)」と呼ばれます)の働きに違いが見られ、睡眠不足の翌日は食べ物のにおいに敏感になっているとわかりました。
さらに、梨状皮質から食べ物に関する情報が送られる脳の部分を見ると、睡眠不足の翌日は送られる情報が少ないこともわかりました(つまり、食べ物を判断するデータが少なくなる)。そして、送られる情報が少ないと、血液中のエンドカンナビノイドが増え、高カロリーの食べ物を多くとるように。
このような結果から研究グループは、睡眠が足りないと、エンドカンナビノイドが関係する嗅覚情報の処理が変化するために、食べるものが変わるのではないかと結論しています。
では、どうすればいいか? 睡眠不足の翌日は、脳がおいしそうなにおいにつられやすくなることに気をつけること。高カロリーなファストフードのショップ前はなるべく通らないようにするのが賢明かもしれません。
<参考文献>
Why we crave junk food after a sleepless night
https://www.sciencedaily.com/releases/2019/10/191008165821.htm
Elife. 2019 Oct 8;8. pii: e49053. doi: 10.7554/eLife.49053.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31591965