食事をするとおなかがいっぱいになり、そのあと、時間がたつとおなかがすく...。食欲のリズムは、どこでどのようにコントロールされているのでしょう? かたやま内科クリニック院長・片山隆司先生に食欲をコントロールする方法を教えていただきました。
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体内のエネルギー状態に応じて、脳が体に指令を送る
食事をするとおなかがいっぱいになり、そのあと、時間がたつとおなかがすく…。食欲のリズムは、どこでどのようにコントロールされているのでしょう?
「食欲は、脳の視床下部というところにある、摂食中枢と満腹中枢によってコントロールされています。体内のエネルギーが不足してくると、それを補おうとする物質が生まれます。それが摂食中枢への刺激となり、『食事をしてエネルギーをとりなさい』と体に指令を出すのです。そして、食事をしてエネルギーが補われると、体内にそれに対応しようとする物質が生まれます。それが満腹中枢への刺激となって、今度は『満腹だから食べるのをやめなさい』と指令をだすのです」(かたやま内科クリニック院長・片山隆司先生)
過去の経験に基づいて、脳がおいしそう=食べたいと判断する
体のエネルギーが不足することで、食べたい気持ちになるはず。それなのに、満腹でも目の前のお菓子を食べたくなるといったことが、なぜ起きるのでしょう
「そのカギをにぎるのは、脳の前頭連合野と呼ばれる部分。前頭連合野は嗅覚・視覚・味覚といった情報を集めて総合的に判断したり、新しい記憶を、過去の記憶と照らし合わせて判断したりする働きがあります。そのため、食べ物を前にすると、その見た目やにおいといった情報を、過去の経験に基づいて判断していきます。そして『おいしい可能性が高い』と結論を出すと、摂食中枢にその情報を送ります。それによって、満腹でも食べたいという気持ちが起きるのです」(片山先生)
食べる必要がない理由を脳に納得させて食欲セーブ!
おいしさを味わう快感を得ようとして生まれる、ニセの食欲。これに従ってばかりいては、当然、体はエネルギー過多となり、太ってしまうことに。こうした食欲とどのようにつき合っていけばいいのでしょうか。
「ニセの食欲は、脳が自ら生み出したもの。それによって欲する食べ物は、エネルギーとしては必要のないものです。それなのに食べたいと思うのは、そこから得られる快感を欲するあまり、本当は不必要な理由を、脳が納得できていないため。つまり、理性が働いていない状態なのです。理由を納得できれば、食べる気持ちは自然とおさまるでしょう。食べる前にわざと別のことをするといったことで興奮した気持ちをいったん静めると、理性を働かせやすいですよ」(片山先生)
血糖値が急激に下がるとすぐに空腹になる!
たっぷり食べて満腹になったのに、なぜかすぐにおなかがすく。このケースは、なぜ起こるのでしょう。
「脳はさまざまな情報をもとに、体がエネルギー不足と判断して食欲をわかせます。その重要な情報のひとつが、血糖値の低下。食事をとると血糖値が上がり、下がってくると空腹を感じやすくなります。つまり、すぐ血糖値が下がってしまうと、すぐにおなかがすくということ。血糖値の上下のスピードは食べ物によって異なります。お菓子や具の少ない主食といった糖質に偏った食べ物は、急激に上がって急激に下がるため、腹もちがしないのです。逆に、食物繊維が多い食べ物や酸味のあるもの、油ものなどはゆっくり上がってゆっくり下がるため、満腹感が持続します」(片山先生)
ストレスを危機と判断して食欲が暴走
ストレスを感じるとどんなことが起きるのでしょう。
「ストレスは、人にとって危機的な状況。そのため、ストレスを感知すると、それに立ち向かおうとして、エネルギーを必要以上に補充しようとするのです。それが、イライラすると食欲がわく原因。ストレスを感知する脳の大脳辺縁系というところが、視床下部にストレスホルモンを分泌するよう指令を出すことで、摂食中枢が刺激されている状態です」(片山先生)
こんなときやあんなとき、食欲がUPするのはどうして? ムリなくニセ食欲をおさえるには? まだまだ知りたい、食欲コントロールの疑問に答えます!
急いで食べると、満腹になりにくいのはなぜ?
胃がゆっくりふくらむほど、満腹感が出ます
急いで一気に食べると、量のわりにおなかがいっぱいにならない。それで、ついもっと食べてしまったり……これはどうして?
「食べ物が胃に入り、ふくらんでいくのは、満腹中枢に満腹を伝える大事な情報。胃への刺激が満腹中枢に届くまでには約15分かかるため、早食いすると、刺激が届く前に食べ過ぎてしまうのです。ゆっくり食べて少しずつ胃がふくらむほど、満腹感は強まりますよ」
食べ過ぎてしまうクセをムリなく改善するには?
食べたものを書き出して目に見える形に!
やせたいとは思っているものの、食べ過ぎるのがクセになっていると、なかなか適度な食事量に改善できないもの。
「漠然と食事習慣を改めようとするのは難しいので、食事記録をつけるのがおすすめです。その日に食べたものを書き出して、何をどのくらい食べ過ぎているかをチェックしましょう。それがわかれば、具体的な改善策が見えてくるはずです」
つい、ダラダラ食べ続ける習慣をやめるには?
食事に集中することで満腹感をUP!
テレビを見たり、メールをチェックしたり……何かをしながら、ダラダラと大量に食べるクセがついている人も。
「満腹中枢は、エネルギーをじゅうぶんとったという情報を得ることで、満腹だから食べるのをやめなさい、という指令を出します。ところが、ほかのことに気をとられていると、その情報が伝わりにくく、いつまでも食べてしまいがち。食事に集中することで、適量で満腹感を感じられるようになるでしょう」
監修/片山隆司、構成・文/室川円香