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食欲はどこから来る? マインドフルイーティングで体の声に耳を澄ませよう

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楽しそうにお互いにパンを食べさせる母親と子ども

お腹がいっぱいでも食べることをやめられない−。それは心を満たすための過食かもしれません。「食べたい」という欲求はどこから来るのでしょう。マインドフルイーティングの指導者、ジャン・チョーズン・ベイズ医師によると、食事への欲求はじつは複雑で「9つの身体の声」がかかわっているといいます。今回はベイズ医師の著書『Mindful eating 人生が豊かになる食べ方の習慣』から、マインドフルイーティングの練習のひとつの方法である体の声についてお伝えしていきます。

Contents 目次

“食べたいという欲求”を発するのは…

心と体のバランスをイメージして石を積み上げる人

マインドフルイーティングは五感を用いて、食べることに集中します。

そして、具体的に「9つの身体の声」というのは、目、触感、耳、鼻、口、胃、細胞、心、脳の声のこと。この体の声を聞く練習を重ねていきます。

「“食べたいという欲求”には、じつは複数の感覚器官がかかわっています。目、鼻、口、胃、細胞、心、それに脳までが、私たちに“食べたい”と感じさせるシグナルを送ってきます。そのため、いったい自分のなかの何が飢えているのか、よくわからなくなってしまうのです。しかし、飢餓感の各側面を個別に調べていけば、どの部分が訴えているのかを理解でき、食べることに関してよりよい判断ができるようになります」(ベイズ医師)。

胃、心、脳の声を聞くレッスン

小宇宙を表現した脳と女性

「9つの身体の声」のうち、ここでは食べる欲求と大きくかかわる胃、心、脳について見ていきましょう。

1.胃との対話

お腹がいっぱいでもついつい食べ過ぎてしまう−。それは胃の満腹サインを無視している状態。コロンビア大学の研究者たちの研究によれば、肥満傾向の人たちは、胃からのシグナルを無視し、食べものの見栄えや、時刻など外的な要因に影響されて食べる傾向が、太っていない人たちに比べてはるかに高いといいます。

「お腹いっぱいかどうかがわかるというのは、赤ん坊や幼い子どもでももっているスキルです。しかし、長年必要以上に食べ続けていると、体内の臓器が絶えず送ってくるシグナルを無視する習慣がついてしまいます。食事中に数回、胃と相談する習慣ができると、ほとんどの人が、今までふつうに食べていた量よりも少ない量で十分に満足できていたのだと気づきます」

2.心との対話

満足感をほしがっているのは、胃ではなく心のほうです。
フラストレーション、悲しさ、イラ立ち、退屈、不安、失望、怒り、混乱、心細さ、焦燥感などうしろ向きの感情が間食、過食の前に現れていませんか。

「ここで理解すべきことは、食べものを胃のなかに入れたところで、心に空いた穴を埋めてくれはしないということ。どんな栄養豊かな食べものも、それだけで“心の欲求”を満足させることはできません。心に栄養を与えられるのは、自分自身あるいは他者との親密さだけです。ただ、他者だけに頼ることなく、そして食べものにも頼ることなく、心を満たす方法を学ぶ必要があります。結局のところ、心のなかの空洞を満たすのに必要なのは、今この瞬間と親密につながっているという実感なのです」

朝日に向かって両手を広げ喜びを表す女性

マインドフルに食べることができれば、食べものとの間に親密さとつながりが生まれ、それが心の空洞を埋め、心が豊かに満たされることに気づくでしょう。

3.脳との対話

体が欲する食事とは別に、「これを食べたほうがいい」「〇〇は体に悪い」と脳の声に左右されていませんか。脳から発せられるのは、思考に基づいた情報、数字、指示、批評などです。

「“脳の声”は、読んだり聞いたりした情報や言葉に影響されます。巷にあふれる料理本やダイエット本が、脳の声を加速させます。現代人は本能的な嗅覚の働きを無視して、頭脳ばかりを働かせるようになってしまったといえます。食べることに関して私たちを不安にさせるのは脳であり、嗅覚や視覚ではありません。脳が“これを食べなければいけない”、“あれを食べてはいけない”と、やきもきしたり不安になったりすると、食べることの楽しみは、雲散霧消してしまいます。何をしていても、そこに意識を向けることによって対象との間に親密さが生まれ、親密さが素朴な喜びをもたらすのです」

脳は2つの機能をもっています。
「思考すること」と「意識を何かに向けること」です。
食べものについて思考しながら食べるのではなく、今食べているものに意識をしっかり向けて食べることで幸福感が大きくなります。

マインドフルに食べると食事を今まで以上に満喫でき、心も満たしてくれます。そうすることで幸福感が生まれ、人生が豊かになっていきます。

文/庄司真紀

参考書籍

書影

ジャン・チョーズン・ベイズ著『Mindful eating 人生が豊かになる食べ方の習慣』(石川善樹監修、高橋由紀子訳、日本実業出版社)
https://www.amazon.co.jp/dp/4534057377

著者
ジャン・チョーズン・ベイズ
小児科医、瞑想の指導者。オレゴン州の禅宗寺院「Great VowZen Monastery」代表。本書で紹介するマインドフルネスの練習はここで開発され、実践を通して改良されている。これまで30年以上にわたり「マインドフルな食べ方」を個人や医療従事者に指導してきた。趣味はガーデニング、陶芸、マリンバ演奏。著書に『「今、ここ」に意識を集中する練習』(日本実業出版社)がある。

監修者
石川善樹(いしかわ よしき)
予防医学研究者・医学博士。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業。ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がよりよく生きる(Well-being)とは何か」をテーマに、企業や大学と学際的研究を行なう。専門は予防医学、行動科学、機械創造学など。講演や雑誌、テレビへの出演も多数。著書に『疲れない脳をつくる生活習慣』(プレジデント社)、『問い続ける力』(筑摩書房)、『健康学習のすすめ』(日本ヘルスサイエンスセンター)ほか多数。監修に『「今、ここ」に意識を集中する練習』(日本実業出版社)などがある。

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