チョコレートは「太るもと」というイメージはもう過去のもの。古くは高価な薬としても用いられたチョコレートは近年、研究によってさまざまな健康効果が報告されています。なかでも注目されているのが、カカオ分70%以上の「高カカオチョコレート」。このほど都内で開かれた明治「チョコレートフォーラム」より、高カカオチョコレートがもつ健康機能の秘密をご紹介します。
Contents 目次
カカオプロテインが善玉菌を増やして、便秘を改善!
今年のバレンタインでは健康志向のチョコレートが注目されていますが、高カカオチョコレートの健康効果のひとつに挙げられるのが「便秘改善」。帝京大学理工学部教授の古賀仁一郎先生によると、高カカオチョコレートに豊富に含まれるカカオプロテインという成分の働きが関係しているそうです。
「カカオプロテインは、腸で消化吸収されにくいたんぱく質。食物繊維と同じように働き、腸内にすむ善玉菌のエサとなることで腸内環境を改善します。さらにそのまま大腸まで届いて便のもととなるので、“カサ増し効果”によってお通じをよくすると考えられます。実際に高カカオチョコレートを毎日25gずつとり続ける試験を行ったところ、2週間後には便秘が改善され、フィーカリバクテリウムという腸内細菌も約2倍に増加しました」
フィーカリバクテリウムは乳酸菌やビフィズス菌に次いで注目されている善玉菌で、健康効果のある物質をたくさん作り出してくれるため「長寿菌」とも呼ばれます。カカオプロテインの摂取によりフィーカリバクテリウムが増え、便秘の改善につながるとみられています。
カカオポリフェノールの力で、体の内側から美肌ケア
チョコレートの有名な成分といえば、抗酸化作用をもつ「カカオポリフェノール」。紫外線の強い赤道直下で育つカカオには、紫外線による酸化から身を守るためのポリフェノールが豊富に含まれています。
古賀先生によると、海外の研究では、「高カカオドリンク」を飲み続けたところ、肌のハリがアップし、キメが改善されてシワも減少したそう。そのうえ肌の水分量が増えて血流も改善されたことから、目の下のクマや肌のくすみの改善効果も期待できるといいます。
さらに、高カカオチョコレートを20gずつ12週間とり続ける研究では、肌のバリア機能が高まり、摂取前の2倍の強さの紫外線を受けても肌が赤くなりにくくなるという結果に。古賀先生は「カカオポリフェノールの抗酸化作用と抗炎症作用によって、紫外線によるダメージから肌を守ったり、DNAやたんぱく質の損傷を抑えている可能性がある」としています。
低GIの高カカオチョコレートなら、食べても太らない!?
これまで高カカオチョコレートがもつ効果について見てきましたが、「チョコレートを食べると太る」と心配に思う人もいるかもしれませんね。
でも、それは「大きな誤解」。そう断言するのは、東京慈恵会医科大学客員教授の佐々木敬先生。理由は血糖値の上昇度を示す「GI値」にあります。
「食後の血糖値の上昇度を示し、食品の“太りやすさ”の基準のひとつになるのがGI値。数値が高いほど、食品に含まれる糖を脂肪として蓄えやすくなりますが、カカオ分72%と86%の高カカオチョコレートのGI値は、それぞれ29と18。GI値55以下が低GIとされるので、かなり優秀な低GI食品といえます。これは、高カカオチョコレートに豊富に含まれる食物繊維が糖質の吸収をゆるやかにし、カカオポリフェノールがインスリンの働きを高めて血糖値を下げるためです」
そのほか、愛知学院大学健康栄養学科特任教授の大澤俊彦先生が研究データをもとに、血圧抑制効果や動脈硬化のリスクを下げる効果などが確認されていることを解説。ここでもカカオポリフェノールの抗酸化作用や抗炎症作用が影響している可能性が示されました。
ダイエットや血糖値が気になる人も食べやすく、さまざまな健康・美容効果が期待できる高カカオチョコレート。バレンタインに贈るのはもちろん、食事のバランスを考えながら毎日コツコツふだんのおやつにとり入れてみるのもよいかしれませんね。
文/井上幸恵