現代人に肥満が増える一般的な原因として、食生活の乱れや運動不足などがとり上げられています。やせるためにはフィットネスに力を入れる、消費エネルギーを制限する、糖質を減らすなどさまざまなことがいわれます。このたび米国の研究グループは、肥満を防ぐための運動による効果について分析。運動がエネルギー消費全体に与える影響はさほど大きくない可能性があると報告しました。
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運動量を増やせばエネルギー消費は増える、はず?
ダイエットに関心が高いのはどこの国も同じ。体重が増える原因はさまざまですが、運動不足のほか、腸内細菌の状態まで関係しているとされます。1日のエネルギー消費量をいかに増やすかは大事ですが、運動でエネルギーを燃やすとじつは体のなかではエネルギーを温存してしまい、1日のエネルギー消費量が増えない差し引きゼロの現象が起こる可能性も指摘されていました。
このたび米国ベイラー大学の研究グループは、運動によって1日のエネルギー消費量が本当に増えるのかを調べるため、アマゾンに住む部族の子ども44人のエネルギー消費量のデータを分析(部族の子どもは狩猟生活のなかで1日中運動しており、エネルギーを旺盛に消費しています)。米国および英国の子どもの1日のエネルギー消費と比較して、差があるのかを確認しました。
運動によらず1日のエネルギー消費は変わらない
その結果、わかったのは、1日のエネルギー消費量はアマゾンの部族の子どもも、米国や英国の都市部の子どももあまり変わらないということです。違っていたのはエネルギーの使い道で、部族の子どもは身体活動に使うエネルギーが25%多くなっていたほか、免疫機能に使うエネルギーも20%高くなっていました。
米国や英国の都市部の子どもは体の成長のためにエネルギーを使っており、結果として、1日全体のエネルギー消費には差がなくなっていたのです。
研究グループは、体はエネルギーの配分は柔軟に変えており、結局、体重増加の根本にあるのは「動かな過ぎ」の生活ではなく、「食べ過ぎ」だと結論づけています。食べ過ぎても運動すれば大丈夫と思いがちですが、食事の内容に気をつけるのが早道といえるかもしれません。
<参考文献>
Eating Too Much — Not Exercising Too Little — May Be at Core of Weight Gain, Study of Amazonian Children Finds
https://www.baylor.edu/mediacommunications/news.php?action=story&story=215728
Constraint and trade-offs regulate energy expenditure during childhood
https://advances.sciencemag.org/content/5/12/eaax1065