日本食に欠かせないヘルシーな食材の代表格「大豆」。さまざまな食品に使われているなかでも、納豆やみそなどの発酵性大豆食品は、これまでにもその健康への効果が多く報告されてきました。このたび日本の研究グループが、発酵性大豆食品を多く食べる人ほど、死亡リスクが低いことを報告。納豆好きの人には朗報です。
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日本人約9万人を追跡調査
アジア諸国、特に日本では、納豆のほか、みそや豆腐など、大豆食品や発酵性大豆食品の種類が豊富。毎日の食事のなかで多く食べられていますが、海外でもこのところ納豆はヘルシーな食材として注目度が増しているところです。同じ大豆から作られていても、発酵させているかどうかで健康への効果に違いはあるのでしょうか?
このたび、国立がん研究センターの研究グループが、1990年と1993年に、全国11か所の保健所管轄区域に住んでいた40~69歳の男女9万2915人(男性4万2750人、女性5万165人)のデータを分析。大豆食品の摂取量と死亡リスクとの関連を報告しました。なお、大豆食品としては納豆とみそを含む発酵性大豆食品、豆腐、ゆし豆腐、高野豆腐、油揚げ、大豆を含む非発酵性大豆食品を分けて調べました。さらに、豆腐については、単独で関連を分析しています。
研究グループは、研究開始から5年目に、総大豆食品(大豆食品全体)、発酵性大豆食品(納豆とみそ)、非発酵性大豆食品(豆腐、ゆし豆腐、高野豆腐、油揚げ、大豆)、それに単独で豆腐をどれだけ食べているか、食事内容について調査。アンケートの結果を用いて各食品の摂取量を計算し、5つのグループに分けています。その後、平均14.8年間の総死亡、がん死亡、心疾患死亡、脳血管疾患死亡、循環器疾患死亡との関連を男女別に分析。正確性を高めるために、影響すると考えられる要因(年齢、地域、肥満度、喫煙、飲酒、身体活動など)に基づいて結果の偏りを調整しています。
納豆とみそを食べると死亡リスクが低くなる
そうして分かったことは、男女ともに発酵性大豆食品を多く食べている人には、総死亡のリスクが低下する傾向がみられたことでした。一方で総大豆食品摂取量(発酵性・非発酵性大豆食品)は、死亡との明らかな関連は見られませんでした。単に大豆を食べるのではなく、発酵したものを食べることに意味があるわけです。
特に効果が見られるのは女性のほうです。なかでも納豆、みそ、豆腐と総死亡リスクとの関連をみてみると、納豆やみそを多く食べる女性では総死亡リスクが低下していましたが、男性ではその傾向はみられませんでした。豆腐については、いずれも低下の傾向はみられませんでした。
死因別では、がんによる死亡リスクと、総大豆食品、発酵性大豆食品、非発酵性大豆食品などの摂取量との間に関連は認められませんでした。その一方で、循環器疾患死亡については、男女ともに納豆を多く食べていた人ほど死亡リスクが低下する傾向がみられました。男性では、納豆を最も多く食べていた人は、最も少なく食べていた人に比べ24%リスクが低く、女性では最も多く食べていた人のリスクは21%も低くなっていたのです。
研究グループは今回の研究で「総大豆食品摂取量は死亡リスクとの関連がみられなかったものの、発酵性大豆食品の摂取量が多いと死亡のリスクが下がるという関連が明らかになった」とまとめています。このような研究結果が出たことについては「大豆にはたんぱく質や食物繊維、ミネラル、イソフラボンといったさまざまな成分が含まれ」また「特に、発酵性大豆食品は加工の過程で成分の消失が少ない」ことがあるためではないかと研究グループはみています。
またもや納豆の健康パワーが裏付けられる結果となった今回の研究。日本人の長寿はもはや納豆なくしては語れない、といったら大げさでしょうか?
<参考文献>
Fermented soy products linked to lower risk of death https://www.bmj.com/company/newsroom/fermented-soy-products-linked-to-lower-risk-of-death/
BMJ. 2020 Jan 29;368:m34. doi: 10.1136/bmj.m34.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31996350
https://www.bmj.com/content/368/bmj.m34
Soy intake and health.
https://www.bmj.com/content/368/bmj.m247
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31996341