転倒などで骨が急に折れてしまう骨折とは違って、「疲労骨折」は徐々に進む形の骨折です。同じ部分に弱い力がくり返しかかり、骨に小さなひびが入って、しだいに拡大します。ランナーではたいていすねに生じ、男性より女性に多いので要注意。疲労骨折の経験がある女性ランナーとそうでいなランナーを比較した研究より、身体面、行動面からその要因が明らかになりました。
Contents 目次
疲労骨折の経験がある人とない人を比較
日本国内で骨折のために医療機関を受診する人は年間19万6000人と推計されています。高齢化のために年々人数は増えていますが、こうした骨折は若い年代においても身近な問題です。ランナーなど、運動して骨に負担がかかることもあるので気をつけるとよいかもしれません。
2018年の米国の調査によると、レクリエーションとしてランニングをする人のうち女性は54%ですが、ランナーの2割が疲労骨折を経験し、その確率は女性においては男性の2倍だそう。でも、その予防方法についてはまだ情報が少ないのです。
米国ヴァンダービルト大学の研究グループは女性に特有の要因がないか、骨密度や筋肉量、ホルモンなどの身体面と、トレーニング、栄養、痛みの対処などの行動面の両方から調べてみました。
対象は、自分の楽しみのために走っているランナーの女性で疲労骨折の経験がある20人(18〜65歳)と、年齢やランニング能力の条件が同じだけど疲労骨折経験がない女性20人。血液検査やX線検査を使って、女性ホルモンと男性ホルモンの量や骨密度、骨の健康に大切なビタミンDやカルシウムなど、身体生理学的な要素を測定しました。そのうえで、心理・行動的な要素についても、個人インタビューでランニングや骨の健康おける各自の見方や行動を聞きとりました。
体調や栄養にも気を配る必要
ここから見えてきたのが、ひとつには、疲労骨折を経験している女性は、していない女性に比べて、寛骨(かんこつ:骨盤を構成している骨)の骨密度が低いことです。骨の強度が下がって、けがのリスクが高くなっていると見られました。さらに、疲労骨折を経験している女性では、ランニングの時間が長かったときなどに生理不順が見られたほか、骨がつくり替えられる速度が速い(骨折しやすくなる)という特徴もありました。
心理・行動面では、疲労骨折を経験している女性の場合、していない女性に比べて、ランニングをレベルアップするペースが速いという特徴が確認できました。そのうえ、走るためには栄養と筋力強化運動が大切と理解している一方で、バランスのよい食事をとっていなかったり、ほかの運動に取り組んだりしていませんでした。痛みやけががあってもランニングを続けてしまうといった特徴も見られました。
ランニングをするような年齢の女性はふつう、骨密度や骨がつくり替えられる速度などの検査対象ではありませんが、研究グループはリスクのチェックは必要かもしれないと指摘しています。栄養や運動、痛みの対処などについての知識は大切といえそうです。
<参考文献>
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1941738120919331
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1466853X19306200