脂肪を効率よく燃焼させたい!─。それはみんなが望むことかもしれませんが、どれくらいの強度で運動すればよいのか、有酸素運動はどうすればよいなど、アドバイスはさまざま。しかし、このたびの海外研究によると、脂肪を燃やす最適な運動強度は人それぞれ異なることがわかりました。つまり一般的な目安に合わせるのではなく、パーソナライズされたアプローチが必要かもしれないのです。
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脂肪燃焼の実際を調べてみた
ある人が1分間で出せる心拍数の最大値を「最大心拍数」といいますが、運動をしているときの心拍数がこの最大心拍数の何%に当たるかで、運動の強度を知ることができます。
この関係をもとに「脂肪燃焼ゾーン」という心拍数の範囲が定まっています。これは年齢や性別に応じ、脂肪燃焼が効率的に行われる心拍数の範囲を推定したものです。エクササイズのためのマシンなどで意識されますが、一般的に望ましいとされているこの範囲「最大心拍数の40〜60%」が本当に適正なのかについてはまだ十分に検証されていないといいます。
そこで今回、米国のマウントサイナイ医科大学をはじめとする国際的な研究グループは人々が運動によって脂肪がどれくらい燃焼しているのかを調べてみました。具体的には26人(女性11人)にさまざまな強度で運動をしてもらい、呼気と吸気の酸素と二酸化炭素の比率から脂肪の燃焼度を計算しました。そのうえで、実際の脂肪燃焼の効率が、心拍数が推奨範囲にあるときに本当に高まるのかを比べています。
脂肪が燃えやすい心拍数は人により異なる
研究からわかったことは、脂肪の燃え方は人によって違い、「脂肪燃焼ゾーン」といわれる一般的な目安と、実際に脂肪燃焼が効率的に行われる心拍数との間には平均23拍の差が見られるということです。
ここから研究グループは、「脂肪燃焼ゾーン」の目安は正確ではないと結論。脂肪燃焼の正確な効率を知るには、個人ごとに運動強度を上げつつ脂肪燃焼を測定するテストを行うほうがよいのではないかと提案しています。
<参考文献>
Kittrell HD, DiMenna FJ, Arad AD, Oh W, Hofer I, Walker RW, Loos RJF, Albu JB, Nadkarni GN. Discrepancy between predicted and measured exercise intensity for eliciting the maximal rate of lipid oxidation. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2023 Jul 15:S0939-4753(23)00283-1. doi: 10.1016/j.numecd.2023.07.014. Epub ahead of print. PMID: 37567789.
https://www.nmcd-journal.com/article/S0939-4753(23)00283-1/fulltext
Fat Burning During Exercise Varies Widely Between Individuals
https://www.mountsinai.org/about/newsroom/2023/fat-burning-during-exercise-varies-widely-between-individuals
心拍数(しんぱくすう)(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-032.html