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摂取エネルギーと消費エネルギーのミスマッチに注意! アスリートが陥りやすい「REDs」とは?

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REDs(Relative Energy Deficiency in Sport)とは、“スポーツにおける相対的エネルギー不足”のこと。アスリートが消費するエネルギーに見合った摂取エネルギーをとれていないために、健康や成績が損なわれる状態を指します。海外研究では、スポーツの種類によって差があるものの、15〜80%のアスリートがこのREDsに関連しており、気づかない場合も多いと報告されました。

監修 : 星 良孝 <ステラ・メディックス>

ステラ・メディックス代表取締役社長 獣医師/ジャーナリスト
専門分野特化型のコンテンツ創出を事業として、医療や健康、食品、美容、アニマルヘルスの領域の執筆・編集・審査監修を担っている。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BP社において「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年に会社設立。YouTubeステラチャンネルでもヘルスケアの話題を発信。
YouTube:https://youtube.com/@stellach

Contents 目次

REDsの症状は本当にさまざま

アスリート

今回の報告は国際オリンピック委員会(IOC)による2023年度の「合意声明」として、国際的な専門家グループが行ったもの。

REDs(Relative Energy Deficiency in Sport)-“スポーツにおける相対的エネルギー不足”は心身にさまざまな影響を与える問題として、2014年度のIOC合意声明で初めて提示されました。今回の声明では 直近5年間の科学的研究における進歩に基づいてREDsを予防し、アスリートの健康や成績を守るためにREDsについての理解と認識を広めることを訴えています。

今回の声明によると、運動でエネルギーを消費したあとに、体の機能を最適に維持するために利用できるエネルギーが足りなくなることは、「利用可能エネルギー不足」(LEA=low energy availability)と呼ばれています。このLEAは体の順応力や回復力でカバーできる程度や短期間であれば問題ありませんが、極端に大きく不足したり、長く続いたり頻繁にあったりすると、REDsにつながるといいます。

REDsによって引き起こされる症状はさまざまで、身体的なものから精神的なものまであります。具体的には、ホルモン異常や無月経、骨が弱くなることによる骨折の増加、腹部の痛みやけいれん、エネルギー代謝やブドウ糖および脂質代謝の異常、鉄分不足、尿失禁、心拍や血流の異常、免疫系の障害、筋肉の機能や体の成長および発達の低下などが挙げられます。また、睡眠障害や摂食障害、うつ病、認知機能の低下といった精神的な問題も含まれます。

当然ながら身体能力が低下してけがや病気が増えスポーツの成績も低下することに。発症には年齢や性別、遺伝子、外的要因、行動などが影響するそうです。

15〜80%のアスリートが関連すると推定

運動後の女性

今回の声明では、REDsまたはLEAについて直近5年間に報告された170以上の研究結果に基づき、REDs分野における科学的進捗をまとめています。それによると、まだ研究は進行中であるものの、現在のところ、15〜80%のアスリートが関連すると推定されるといいます。

また新しい研究では、炭水化物が十分に活用できない状態だと骨の健康が損なわれ、免疫力が低下し、鉄分が不足することが明らかになっています。こうした状態ではLEAでなくてもREDsの発症を加速する可能性があることも示されているといいます。

さらに、オーバートレーニング症候群と似ている点も指摘されています。激しいトレーニングをくり返したあと十分に回復できず、疲労やパフォーマンスの低下,けがをしやすいなどの症状が現れるものです。

このほか、メンタルの健康との相互作用なども考える必要があるよう。周囲から褒められたりすると、REDsのリスクに気づきづらくなるといいます。

REDsは多くのスポーツにおいて男女両方のアスリートでふつうに見られるものなのに、その症状や心身の健康・成績に与える影響については、アスリート自身を含めて支援チームやコーチ、医療関係者、一般大衆の間ではいまだ十分に認識されていないと、研究グループは指摘。

REDsは重大な結果につながりかねないため、なるべく早く気づくことが大切だといい、LEAの重症度によって回復期間は異なるかもしれませんが、食事療法が最も有効と考えられるそう。コーチや家族も一体となってスポーツ医学の専門家や栄養士、心理学者などを含めたチームでの包括的な取り組みを、研究グループはすすめています。

アスリートだけでなく、日常的にフィットネスやダイエットをするうえでも、REDsについて知っておくとよさそうです。

<参考文献>

Prolonged mismatch between calories eaten and burned may be putting many athletes at risk of REDs
https://www.bmj.com/company/newsroom/prolonged-mismatch-between-calories-eaten-and-burned-may-be-putting-many-athletes-at-risk-of-reds-relative-energy-deficiency-in-sport/

Mountjoy M, Ackerman KE, Bailey DM, Burke LM, Constantini N, Hackney AC, Heikura IA, Melin A, Pensgaard AM, Stellingwerff T, Sundgot-Borgen JK, Torstveit MK, Jacobsen AU, Verhagen E, Budgett R, Engebretsen L, Erdener U. 2023 International Olympic Committee’s (IOC) consensus statement on Relative Energy Deficiency in Sport (REDs). Br J Sports Med. 2023 Sep;57(17):1073-1097. doi: 10.1136/bjsports-2023-106994. PMID: 37752011.
https://bjsm.bmj.com/lookup/doi/10.1136/bjsports-2023-106994

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