やせやすい体を作るためには、「筋肉は不可欠」という言葉を耳にする一方で、「筋肉が増えると、太ってみえる」「体が硬くなる」「筋肉で体が重くなり、疲れやすくなる」といった、マイナスイメージを持つ人が、いるようです。
しかし、「それは、ズバリ、大きな誤解。筋肉こそが、やせるための原動力です」と、コンディショニング・トレーナーの桑原弘樹先生。そこで、「筋肉」がもたらすホントの効果と、効率よく筋肉をつけるためのコツを教えていただきました。
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筋肉が増えることで、熱を発するたんぱく質が増える!
では、なぜ筋肉が痩せる力を発揮するのでしょうか?
「やせるためには、エネルギーを消費しなくてはなりません。摂取カロリーよりも消費カロリーが多くなれば必ずやせるのですから。筋肉に隠されている秘密のひとつは『サルコリピン』という特殊なたんぱく質の働き。サルコリピンは、熱を生み出す作用があり、それによってカロリーの消費量を増やしてくれます。そして、このサルコリピンは筋肉の中にだけ存在することがわかっています。つまり筋肉が増えればサルコリピンも増え、その結果、消費カロリーが増えて太りにくい体になれるのです」(桑原先生)
「また、筋肉をつけて体が硬くなるというのも誤解です」と、桑原先生。
「ボディビルダーのようムキムキとした体の人の場合肥大した筋肉がストッパーになり、関節の可動域が狭まることはあるかもしれません。しかし、それは一般的に言われる体が硬い(筋肉の柔軟性が低い)とは異なります」(桑原先生)
筋肉をつければ、冷え性改善や脳の活性化効果も!
桑原先生によると、筋肉をつけると、消費カロリーが増えること以外にもたくさんのメリットがあるそう。
「人間の体は、血液が循環することで全身に酸素や栄養が全身に行き渡り、それと同時に老廃物が回収されます。血液は、まず心臓によって勢いよく送り出されるですが、それだけでは力不足。そこで、筋肉がポンプ的な役割をして、血液を体の隅々まで運んでいきます」(桑原先生)
つまり、筋肉量が多いほうが、このポンプ作用がよく働き血液の流れがスムーズになるのです。血流循環がよくなれば、冷え性改善や免疫力アップなどといった不調改善効果が期待できるほか、脳が活性化されることも研究で明らかになっているそう。
「『筋肉が増えると、疲れやすくなる』というのも、もちろんありません。血液循環がよくなれば疲れやむくみの素でもある、老廃物も回収されます。また、脂肪燃焼力も高まり、やせ効果もアップします」(桑原先生)
ラクしてやっても、効果なし! やせる体になるための「筋トレ」の極意とは?
ここまでに説明したように、健康で美しい体を保つためには、筋肉が重要な働きをします。
そして、筋肉をつけるためには、ランニングや水泳などの有酸素よりも、「筋トレ」が必須なのだとか。
「筋肉は大きく分けて、長時間の運動で活動する『遅筋』と、瞬間的な力を発揮する『速筋』の2種類がありますが、筋肉をつけるには「速筋」への刺激が必要なんです。しかし、通常の有酸素運動で使うのは、主に遅筋。効率よく速筋を鍛えるためには、筋トレが有効です」(桑原先生)
となれば、さっそく筋トレを実践したいところですが、桑原先生によるとその前に押さえておきたい2つの極意があるそう。その極意とは?
「ひとつは、『力を不合理に使うこと』です。多くの人は、重い物を持ち上げるときに例えば脚を少し広めに開いたり反動をつけたりして、ラクに持とうとしますよね。それは、力を合理的に使っているということです。しかし、正しい筋トレの理論はそれとは真逆。いかに重く感じ、筋肉に負荷をかけるかが大切です。ダンベルを上げるにしても、あえて重く感じるように反動はつけず効かせながら上げる。そのように、『力を不合理』に使うことで、効率よく筋肉が鍛えられます」(桑原先生)
そしてもうひとつの極意は、「エネルギーを使いきること」。
筋肉をつけるためには速筋を鍛える必要がありますが、筋トレをする際、軽々と行っているうちは遅筋にしかアプローチできていません。負荷をかけ続け、体がギブアップするまでエネルギーを使いきり、初めて速筋が使われるのです。余力があるところで止めてしまっては、筋トレの効果は得られないです」(桑原先生)
「回数を決めて、それをいかにラクラクとこなすか」といった筋トレをしている人もいますが、それは間違い! それでは、体は変わりません。
2つの極意を踏まえて効率よく筋肉をつけ、やせる体を手に入れましょう!
文/柿沼曜子 写真/©naka-fotolia.com