元気に散歩する人は、年齢によらず若々しく見えるもの。従来の研究で、70歳~80歳代で歩く速度が遅い人は、早く死亡する傾向があることが明らかになってきていましたが、このたび米国デューク大学の研究グループは、45歳時点での歩く速度が遅い人は老化が早いことを報告。アンチエイジングを考えるうえで、注意するとよいかもしれません。
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歩くスピードは健康とどう関係?
きびきびと歩くのか、だらだらと歩くのかは、単純に体力を反映しているばかりではありません。高齢の人にとっては、歩行のスピードが速いか遅いかで、死亡のリスクを知るための尺度にもなることがこれまでの研究からわかっているからです。そうした歩くスピードは、若い人にとってどのような意味をもつのでしょうか。
今回、米国デューク大学の研究グループは、40代での歩くスピードが遅い場合に、老化が速いのではないかと仮説を立てて、その実態や幼少期からの認知機能の低下を分析しました。研究の対象になったのは、1972年から1973年にかけてニュージーランドで生まれた1037人を追跡調査した「ダニーデン研究」のデータです。歩行スピードと脳のMRI検査などの結果との関連性が調べたのです。
ゆっくりと歩く人には、体や脳に老化現象が…
するとわかったのは、高齢期よりもはるか前から、歩くスピードが遅いことが老化サインになっているということでした。歩くスピードが遅い人ほど、脳が老化していたのです。脳の容積や表面積が小さく、脳の表面に近い「皮質厚」も薄くなっていました。脳の内部の白質に病変が見られる人も多くなっていました。歩くスピードの遅い人は体や脳が老化傾向にあると研究グループは指摘します。さらに、8人のボランティアに調査の対象となった人の顔写真から年齢を判断してもらったところ、歩くスピードが遅い人はより老けて見えることもわかったのです。
しかも幼児期の認知機能と、大人になってからの歩くスピードにも関連がありました。対象者の3歳時点でのIQの値のほか、言語理解能力、欲求不満への耐性、運動能力、感情抑制のスコアが低いと、45歳時点での歩行スピードが遅いことがわかったのです。
幼いうちから老化のペースが決まっているとしたら早めの対策をしたいところ。因果関係はさらに研究が必要になりそうですが、自分の歩き方から美容や老化の問題を考えてみるのは意味がありそうです。
<参考文献>
NEW ZEALAND STUDY CONNECTS WALKING SPEED WITH BRAIN HEALTH IN 45-YEAR-OLDS
https://today.duke.edu/2019/10/new-zealand-study-connects-walking-speed-brain-health-45-year-olds
JAMA Netw Open. 2019 Oct 2;2(10):e1913123. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2019.13123.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31603488