親であれば誰でも子どもにはすくすくと健康に育ってほしいと願うもの。これまでの疫学調査で、親が低たんぱく質や高脂肪のバランスの悪い食生活を送ると、その子どもは生活習慣病を発症するリスクが高くなるとわかっていました。このたび日本の研究グループがそのメカニズムについて発表。どうやら父親の食生活が子どもの将来の健康のカギを握っているようです。
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子どもの将来の健康を守るには
このたび親の食生活と子どもの健康との関係について報告したのは、理化学研究所開拓研究本部(CPR)の国際共同研究グループです。研究グループが注目してきたのは、遺伝子の働きをオン・オフする仕組み「エピゲノム」の変化です。過去の研究から、このエピゲノムの仕組みはストレスなどの環境要因によって影響を受けており、人間の健康にも影響してくることがわかっていました。
今回、研究グループは、こうした遺伝子のオン・オフの仕組みが人の食事からどう影響を受け、さらにその子どもの将来の健康にどう影響するのかを調べたのです。研究グループは、動物実験によって親が摂取したたんぱく質の量に差をつけて、子どもの遺伝子の機能にどんな変化をもたらすかを分析しました。
子どもの遺伝子に変化が…
こうしてわかったのは、父親のたんぱく質摂取が低レベルである場合に、子どもの肝臓の遺伝子に変化が見られ、このために新陳代謝に影響が及んでしまう可能性があるということでした。詳しく調べたところ、低たんぱく質の影響は父親の精巣の生殖細胞に現れていました。生殖細胞の変化は精子の変化に、さらに卵子との受精後、受精卵の変化につながります。結果、子どもの遺伝子にも影響するメカニズムが考えられました。
親の食生活の乱れが、本人の健康に影響があるだけでなく、子どもの将来の健康にも影響してくることがはっきりと示された結果と研究グループは解釈します。子どもの将来のためにも、今一度家族みんなで食生活を見直してみるとよいかもしれません。
<参考文献>
Parental diet affects sperm and health of future offspring
https://www.riken.jp/en/news_pubs/research_news/pr/2020/20200320_1/index.html
ATF7-Dependent Epigenetic Changes Are Required for the Intergenerational Effect of a Paternal Low-Protein Diet
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1097276520301489