雨が降る前や台風が近づくと頭痛がする、梅雨時になると古傷が痛む・・・。これまで「気のせい」で片づけられてきた、こうした症状は、天気の影響による「天気痛」であることがわかってきました。愛知医科大学・学際的痛みセンター客員教授で、“天気痛ドクター”としてメディアでもおなじみの佐藤純先生に、天気痛について伺いました。
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「天気痛」は気象病のひとつ
天気の影響を受ける症状、病気を総称して、「気象病」といいます。代表的な気象病には、片頭痛や関節痛がありますが、そのほかにも脳卒中、心臓病、ぜんそく、歯周病、うつなど多種多様です。気温、湿度、気圧の変化が三大要因で、風の強さや降雪などの影響を受けることもあります。
天気痛は、この気象病の中のカテゴリーのひとつで、佐藤先生が名付けました。
「天気痛は、気象病の中でも、天気の影響を受けて生じたり、悪化したりする“痛み”のことをいいます。もともと慢性的な痛みを持っていることが前提です。慢性的な痛みとは、常にあるという痛みではなく、持続的に再発する痛みで、たとえば、片頭痛、肩こり、頸椎症、関節痛などです。古傷が痛むということもあります。痛みに伴う、眠気、だるさ、めまい、耳鳴り、抑うつといった症状も、天気痛に含まれます」
気温・湿度・気圧という要因のうち、特に気圧の影響を受けやすいのが天気痛の特徴です。
「高気圧から低気圧へと、気圧が低くなるときのほうが、痛みが出やすいようです。低気圧が近づくと、痛みが起こり始め、気圧が低い状態で安定すると、治まります。つまり、雨が降り始める2~3日前になると痛みが強くなり、雨が降り始めると治まるのです。そのため、天気痛の患者さんには、雨が降る日をピタリと言い当てる方も多いです」
天気痛の中でも、30~40代女性に多いのが片頭痛
天気痛の中でも、30~40代の女性に多いのは、片頭痛や緊張型頭痛の悪化です。
「片頭痛の場合、まったく痛くないときもあれば、動けないほどの痛みが起こるときもあり、症状に波があります。まぶしい光など、なんらかのきっかけで痛みが強く出ることを『発作』といいますが、天気痛のある人は、気圧の変化でも発作が起こります」
頭痛はめまいや耳鳴り、眠気あるいは肩の痛み、首痛といった症状を伴うことも多く、また、めまいや疲労感が頭痛の予兆として出ることもあります。
「めまいや耳鳴りを訴えて受診される方でも、よくよく話を聞くと、『日頃から頭痛がある』という人も。片頭痛のある方は、頭痛には慣れっこになっていて、痛みは頭痛薬で抑えられるため、症状として頭痛がフォーカスされにくいこともあるようです」
寒暖差の激しい春、梅雨、台風シーズンに痛みが悪化
1年のうちで、天気痛の症状が出やすいのは、季節の変わり目です。気圧や寒暖の差が激しい春先、低気圧と長雨が続く梅雨どき、大きな低気圧が通過する台風シーズンは、特に症状が悪化しやすくなります。
「2019年は、台風15号、19号など日本列島に甚大な被害をもたらした超大型台風が次々と襲来しました。また、本来なら夏や冬は、気圧が安定して、天気痛の症状も出にくいのですが、今年の冬から春先は、気圧の低下に寒暖差が追い打ちかけ、天気痛の患者さんにはつらいシーズンが続いています。夏もゲリラ豪雨が襲うなど、地球環境が激烈になっていることで、これまで天気の影響を受けなかった人でも、天気痛を訴えるケースが増えているように思います」
痛みや体調不良に天気が関わっていることが、周囲になかなか理解してもらえず、「気のせいでは?」と言われるなど、つらい思いをしている方も多いといいます。また、本人にも天気痛の自覚がないと、「どうしていつも体調が悪いのだろう」「何か重大な病気ではないか」と不安になったり、いつ襲ってくるかわからない痛みに、うつうつとした気持ちになったりすることもあります。
「痛みが天気の影響を受けていることがわかれば、対処法もわかるので、漠然とした不安は解消されます。それが治療の第一歩にもなります」と佐藤先生。
くり返す頭痛や古傷の痛みが天気の影響を受けているかどうかは、天気と痛みが関連しているのかどうかを記録していくことがおすすめですが、まずは、カンタンにわかるチェックリストがあります。あてはまる項目をチェックしてみましょう。
□なんとなく、雨が降ることを予想できる。
□季節の変わり目は体調が悪い。
□乗りもの酔いしやすい。
□飛行機、新幹線、高速エレベーターや高いところが苦手。
□耳鳴りしやすい。耳抜きが下手。
□過去に、事故やスポーツでケガをしたことがある。
□ストレスが多い。
いかがでしたか。
あてはまる項目が多いほど、天気痛のリスクが高いといえます。
取材・文/海老根祐子