女性より男性のほうが短命な主な理由には、仕事やライフスタイルに関係した“社会的要素”がよく挙げられます。でもじつは人間以外の多くの動物でもオスとメスで寿命が違うと知られています。このたび寿命の男女差には「性染色体」の違いという“生物学的要素”が大きく影響しているという報告がありました。
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男性が短命な理由は?
体の設計図といわれる遺伝子は糸状に凝縮され、染色体として細胞の核のなかに収納されています。この染色体は何本にも分かれており、このうち性別を決めている染色体のことを「性染色体」といいます。性染色体は哺乳類の場合、メスがXの形をした染色体2本が対になるXX染色体をもち、オスはXの形とYの形をした異型の染色体2本が対になったXY染色体をもつことが知られています。また、鳥類はオスが同型(ZZ)でメスが異型(ZW)になっています。
オスとメスの寿命を比べると、哺乳類は人間と同じくメスのほうがオスより長生きで、鳥類はオスのほうが長生き。染色体が異型だと、X(あるいはZ)染色体の遺伝子に異常が起きたときに補えず、健康を保ちづらく、寿命に差ができるとの説があります。
この説に注目した研究グループは、これまでで最も多くの動物種に関する寿命データを集めて分析してみました。哺乳類や鳥類だけでなく、魚類、は虫類、昆虫など、220種以上に及ぶオスとメスの寿命の違いに関するデータです。
同じ異型でもオスのほうが短命
こうした分析からわかったのは、性染色体が異型の性(つまり、人間ならXYの男性、鳥類ならZWのメス)は、同型の性より平均17.6%寿命が短いということ。やはり、男女差というよりも染色体の違いが寿命に影響していると研究グループは分析しました。
ただし、もうひとつ意外な結果としてわかったのは、性染色体の寿命への影響はオスのほうが出やすい可能性があることです。オスが異型の種(人間のように)では、メスのほうがほぼ21%も長生きで、メスが異型の種(鳥類のように)ではこの差は7%に縮まっていたからです。異型のオスは異型のメスより短命なのです。
やはり男性であることには根本的に寿命を短くする何かがある可能性があるようです。研究グループは異性をめぐる競争やY染色体の劣化など、さらなる研究が必要と指摘していますが、男女の寿命の背景にこうした性染色体の差があるのは明らかであるようです。
<参考文献>
Why men (and other male animals) die younger: it’s all in the Y chromosome
https://newsroom.unsw.edu.au/news/science-tech/why-men-and-other-male-animals-die-younger-it%E2%80%99s-all-y-chromosome
Xirocostas ZA, Everingham SE, Moles AT. The sex with the reduced sex chromosome dies earlier: a comparison across the tree of life. Biol Lett. 2020;16(3):20190867. doi:10.1098/rsbl.2019.0867
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32126186