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新幹線や高速エレベーターも天気痛を引き起こす?! 日常に潜む天気痛リスク
雨が降る前や台風が近づくと頭痛がする、梅雨時になると古傷が痛む…。これまで「気のせい」で片づけられてきた、こうした症状は、天気の影響による「天気痛」であることがわかってきました。しかし、天気痛は、天気の変化だけで起こるものではありません。身近なリスクについて、愛知医科大学・学際的痛みセンター客員教授で、天気痛ドクターとしてメディアでもおなじみの佐藤純先生に伺いました。
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新幹線を降りると「疲れた」と感じる理由
天気痛を引き起こすのは、天気の変化だけではありません。日常生活のさまざまな場面で、私たちは気圧の変化を体験しています。
たとえば、飛行機です。
「飛行機は上昇するにつれ、気圧が下がるため、体の内と外に気圧差が生じて、鼓膜などに圧力がかかります。飛行機の上昇時や下降時に耳がキーンとなったり、耳が塞ぐような感覚になったりするのは、気圧差のせいです」
もっと身近な例でいうと、新幹線もまた、大きな気圧の変化を体験する乗りものです。
「小倉から名古屋まで、のぞみ号に乗車したときに、試しに車内の気圧を測定すると、2時間半で930ヘクトパスカルから1005ヘクトパスカルに下がり、75ヘクトパスカルという大きな気圧の変動がありました。
特に気圧の変化が激しいのは、トンネルを走っているときです。トンネルに入ると車内の気圧は一気に変化します。トンネルを出たり、入ったりをくり返すことは、短時間に何度も気圧の変化を体験することなのです。
本来、人間の体は、血圧も体温もゆるやかに上がったり下がったりをくり返しています。そこに、超スピードで気温や気圧の変化を体験することは、体に負担がかかることなのです。また、こうした気圧の変化で、私たちの体内の液体や気体も膨張したり、収縮したりするので、体に影響がないとはいえませんよね。人間の能力として、オリンピック選手クラスでも、10秒で100m移動するのがやっと。新幹線など高速の乗りものに乗ることは、人間のキャパを超えているともいえます。
外来には、患者さんが全国からやってきますが、新幹線移動が耐えられず、3回も途中下車して休みながら来るという方もいます。ちなみに、新幹線が苦手な人は、気圧の影響を受けにくい中央付近の車両に乗るのがおすすめです」
2027年には、リニア中央新幹線が開業を予定しています。品川~名古屋間を40分で結ぶ超高速新幹線に、佐藤先生は「不調を訴える人が多くなるのでは?」と危惧しています。
エレベーターで気持ちが悪くなる
ふだん何気なく利用しているエレベーター、地下鉄のトンネルでも、気圧の影響を受けています。都心では、住まいはタワーマンション、勤務先は高層ビル、通勤は地下鉄という方もいることでしょう。
「急激な高低差による気圧の変化は、天気痛の人にとってはつらいものですが、『乗りもの酔いしやすい」『エレベーターに乗ると気持ちが悪くなる」という人の中にも、揺れや加速・減速ではなく、気圧の変化の影響で、めまいや吐き気といった症状が出ている人もいるかもしれませんね」
取材・文/海老根祐子