雨が降る前や台風が近づくと頭痛がする、梅雨時になると古傷が痛む…。これまで「気のせい」で片づけられてきた、こうした症状は、天気の影響による「天気痛」であることがわかってきました。愛知医科大学・学際的痛みセンター客員教授で、天気痛ドクターとしてメディアでもおなじみの佐藤純先生に、天気痛のセルフケア法について伺いました。
Contents 目次
運動、快眠など「当たり前の生活」がセルフケアのカギ
天気痛に対処するには、つらい痛みが天気の影響を受けているかどうかを知ることをはじめ、次の3つが柱になります。
(1)痛みが天気の影響を受けていることを認識する。
(2)薬の服用などで、痛みをコントロールする。
(3)痛みが出ないようにセルフケアで工夫する
今回は(3)についてお話を伺いました。
天気痛の人は、自律神経のバランスが崩れやすくなっています。セルフケアでは、まず自律神経の働きを整えていきましょう。
●朝食を必ず食べる
朝食には、眠っている間に下がった体温を上げる働きがあります。また、副交感神経から交感神経にスイッチを切り替え、1日の体のリズムを作るのに役立ちます。
●軽い運動をとり入れる
生活にとり入れやすいのは、ウォーキングや軽めのランニングです。1日30分程度、汗ばむ程度の強度がおすすめです。水泳や水中ウォーキングは、体温より冷たい水中で行うことで、自律神経を刺激して、リセットする効果があります。
「現状、めまいやふらつきがある人や、体調がすぐれない人は、不調をとる治療を優先しましょう。調子がよくなってきたら、自分のペースでできる運動を様子を見ながら始め、最終的に1日30分を目指しましょう」
●シャワー浴より、お湯にゆったりつかる
自律神経を整えるには、シャワー浴よりも、お湯につかるほうがおすすめ。熱いお湯は、交感神経を刺激して、痛みが出ることがあるので、夏場は40℃以下、冬場は41℃以下を目安にします。
「ただし、片頭痛の場合は、お湯につかることで、血管が広がり、痛みが出ることがあるので、頭痛がするときにはシャワー浴にします」
●睡眠は寝る時間と起きる時間を一定に
質のよい睡眠をとるためは、寝る時間と起きる時間を一定にして、睡眠リズムを作ることを心がけます。朝に光を浴びることで、体内時計がリセットされ、睡眠リズムが整ってきます。「寝る前に、スマートフォンを見たり、パソコン作業を行ったりすることは、交感神経を刺激して、寝つきを悪くします。夕方以降は、コーヒー、紅茶、緑茶などカフェインの入った飲みものも避けるようにします」
「当たり前のことばかりですが、この当たり前のことが、自律神経を整えるカギなのです。
また、微高気圧を体験することも、自律神経を整えるには有効です」
愛知医科大学運動療育センターでは、『プレッシャワー』という装置で、微高気圧の状態を体験できます。
マッサージ、ツボ押しで自律神経を整える
自律神経を整えるために手軽にできるマッサージ、ツボ押しを紹介します。
●くるくる耳マッサージ
耳を引っ張ったり、くるくる回してマッサージしたりすることで、内耳の血流やリンパ液の循環をよくする効果が期待できます。自律神経が整い、天気痛の予防や改善につながります。朝・昼・晩の1日3回行いましょう。
【やり方】
1.耳を軽くつまみ、上・下・横に5秒ずつ引っ張る
2.耳を軽く引っ張りながら、うしろに向かってゆっくり5回まわす。
3.耳を包むように折り曲げ、その状態を5秒間キープする。
4.耳全体を手のひらで覆って、ゆっくり円を描くように、うしろに向かって5回まわす。
●ツボ押し
天気痛の予防や改善に効果のあるツボ刺激もおすすめです。
【内関(ないかん)】
酔い止めのツボで、めまいやふらつきに効果があります。天気痛の予兆として、めまいを感じたときに押してみましょう。
お米を1粒絆創膏の内側にくっつけて、それをツボに当て、上から押して刺激するのもおすすめです。
「内関」は、手首の内側を人さし指、中指、薬指の3本で抑え、人さし指の第一関節があたる周辺にあります。
取材・文/海老根祐子 イラスト/黒川ゆかり