公共の場でマスクを着用する習慣のない欧米の国でもマスクが一般的になりつつあります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行後、感染予防の効果があるのかは賛否両論もありました。そんななか、マスク着用がウイルス感染を防ぐ効果があるとの研究結果が海外から報告されました。マスクの認識は世界中で大きく変わる方向となりそうです。
Contents 目次
吐く息に含まれるウイルスの量を比較
日本では外出するときにマスクを着用するのが日常的になっています。欧米でもマスクの価値が認められつつあり、米国疾病対策センター(CDC)も有効な予防手段にならないという以前のアドバイスを再検討すると発表するなど、マスクへの見方には変化が出ています。
今回、ハーバード大学や香港大学などの研究グループは、季節性のインフルエンザウイルス、コロナウイルス、ライノウイルス(どちらもふつうの風邪のウイルス)のいずれか(または複数)に感染している111人を対象に、マスクをつけた場合とつけない場合とで、吐く息と咳に含まれるウイルス量を比較。研究のポイントは、マスクをつけることで、つけた人がウイルスから保護されるかどうかではなく、ウイルスの拡散がどのくらい減るかに注目したところです。
今回の研究は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以前に行われたものです。使用したマスクは「サージカルマスク」と呼ばれるタイプで、一般的な「不織布マスク」とほぼ同じと考えられます。
コロナウイルス拡大を減らす効果が
その結果、わかったのは、マスクをしていると吐く息の“飛沫”と“エアロゾル”(空気中に浮遊する微小な粒子)に含まれるコロナウイルスの量が減るということです。飛沫については、インフルエンザウイルスの量も減りましたが、ライノウイルスはマスクをしても減りませんでした。
新型コロナウイルスは、今回の研究で調べた風邪の原因となる季節性コロナウイルスとほぼ同じ大きさと考えられます。そのため、感染した人(あるいは感染しているかどうかわからない人)がマスクをつければ、新型コロナウイルスの拡散を遅くする効果があると見られます。研究グループは「少しでも伝播を減らせるのであれば、マスクをつける価値があるのではないか」と指摘。
マスク着用の重要性は国際的に認識されることになりそうです。
<参考文献>
Wearing Surgical Masks in Public Could Help Slow Pandemic’s Advance, New Study Suggests
https://sph.umd.edu/news-item/wearing-surgical-masks-public-could-help-slow-pandemic-s-advance-new-study-suggests
Respiratory virus shedding in exhaled breath and efficacy of face masks
http://dx.doi.org/10.1038/s41591-020-0843-2