これといった病気はないのに、なんとなく体調がすっきりしない、という疲れの正体は、自律神経の疲れです。この自律神経の疲れをとるには、「質のいい睡眠をとることがカギ」と疲労研究の第一人者で、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身先生は話します。疲れをとる睡眠の質の高め方を紹介します。
Contents 目次
睡眠中に、酸化した自律神経細胞がどんどん修復される
日々の食事を見直したり、運動をとり入れることで、疲れを軽くしたり、疲れがたまることを防ぐことができますが、根本的に疲れをとるには、睡眠しかありません。
「自律神経が多くの酸素を必要とするような運動やストレス状態におかれると、細胞の酸化が起こり、疲労物質が発生して、疲れを感じます。日中は活発に活動しているので、疲労物質も多く発生し、疲労回復物質によるリカバリーが間に合いません。しかし、睡眠中は、ほとんど活動がなく、疲労物質も発生しないため、傷ついた細胞の修復がはかどり、疲れがとれるというわけです」
では、疲れをとるには、何時間の睡眠が必要なのでしょうか。毎日の睡眠時間が足りているかどうか、気になる人も多いかもしれません。
「必要な睡眠時間は、個人差があります。夜眠ってから、目覚まし時計なしで自然に目が覚める時間が、その人にとって必要な睡眠時間となります。平日の睡眠時間と、休日に自然に起きたときの睡眠時間に2時間以上の差がある場合は、睡眠時間が足りない“睡眠負債”の状態にあるといえます。睡眠負債の返済には、休日の前日は、1時間早く寝て、翌朝は1時間遅く起きるという“計画的朝寝坊”という方法があります。これで2時間分の負債を返すことができます。ただし、“寝だめ”はできません。それ以上の朝寝坊は、睡眠のリズムが崩れてしまうことがあるので注意しましょう」
質のいい睡眠は朝に始まる
睡眠の質を高めるには、セロトニンという物質もカギになります。セロトニンの分泌を増やすには、朝の活動が大切です。
「セロトニンは、太陽の光を浴びることで分泌が高まります。朝起きたら、まず、太陽光を浴びるようにしましょう。朝食をしっかり食べることも、セロトニンの分泌を促します。朝に分泌されたセロトニンは、14時間後に自然な眠気を誘う睡眠ホルモン・メラトニンに変わるので、寝つきもよくなり、睡眠リズムが整うことで、睡眠の質が上がることが期待できます。
また、近年の研究でセロトニンは、自律神経の働きを整えることもわかってきました。疲れ対策にも、セロトニンの分泌を高めることが重要といえます」
最後に、質のいい睡眠のための10のルールを紹介します。
【質のいい睡眠をとるための10のルール】
1.週に数回、汗をかかない程度のウォーキングを行う。
2.毎日決まった時間に起きる。
3.40℃のお湯で8~15分間、半身浴をする。
4.寝る1時間前にリラックスタイムをつくる。
5.寝る前の照明は、オレンジ色がおすすめ。
6.冬場、夏場はエアコンをじょうずに利用して、就寝中の温度を一定に。
7.ベッドに入る30分前には、スマホ操作を終わりにする。
8.夕方以降は、コーヒーなどのカフェイン飲料を控える。
9.お酒の飲み過ぎに注意。寝酒は控える。
10.寝る前に1杯の白湯を飲む。胃腸が温まり、副交感神経優位に。
できることから実行してみましょう。
取材・文/海老根祐子