新型コロナウイルスはせきやくしゃみなどで飛沫感染することから、ほかの人のせきやくしゃみに以前よりも敏感になったという人もいるかも。しかしぜんそくなどアレルギー性の病気が原因でせき込む場合も少なくなく、まわりに対して心苦しさを感じている人も多いのではないでしょうか。できるだけせき込まないようにするにはどうすればよいのか。それには睡眠時間が影響していることが、このたび米国から報告されています。
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ぜんそくと睡眠時間の関係を分析
健康に過ごすには睡眠を適度にとることが重要であることはよく知られています。このたび米国ピッツバーグ大学の研究グループは、せきが続いてしまうぜんそくへの影響について調査。睡眠時間が短すぎても長すぎても、大人のぜんそくに悪影響を及ぼすことを報告しています。
研究グループは「米国国民健康栄養調査(NHANES)」の2007~2012年のデータを用いて、大人のぜんそくに対して睡眠時間が、患者報告アウトカム(PRO:患者の主観に基づく健康状態に関する報告)や医療施設の利用回数にどのように影響するか統計的に分析しました。
ぜんそくの症状を自己申告している20歳以上の成人1389人を調査対象として、「平日と週末の平均睡眠時間は?」という質問に回答してもらい睡眠時間を調査。その結果から、対象者を5時間以下の短時間睡眠、6~8時間の標準的睡眠、9時間以上の長時間睡眠に分類して、ぜんそくとの関係について分析しました。なお、25.9%が短時間睡眠、65.9%が標準的睡眠、8.2%が長時間睡眠となりました。
睡眠が短すぎても長すぎても、ぜんそくにはよくない
分析からわかったのは、短時間睡眠の人は標準的睡眠の人に比べてぜんそくの発作が起こりやすくなっていることでした。ぜんそくの発作があったのは、標準的睡眠の人が45%だったのに対し、短時間睡眠の人は59%、長時間睡眠の人は51%でした。また短時間睡眠の人は空咳も出やすく、入院が必要となるケースも多いことがわかりました。加えて、短時間睡眠の人には生活の質(QOL)の低下も。身体的、精神的に不健康になり、心身の不調から日常生活も活動的に過ごせていなかったのです。
さらに短時間睡眠の人は標準的睡眠の人に比べて、医療施設の利用回数が多いこともわかりました。一方で長時間睡眠の人では、ぜんそくの喘鳴(ゼーゼーと呼吸すること)によって身体的活動が制限されるケースが多く見られました。また長時間睡眠の人と標準的睡眠の人の間で、患者報告アウトカムや医療施設の利用回数に特に大きな違いは見られませんでした。
研究グループは「今回の結果からぜんそくを良好にコントロールするために医師と患者で睡眠状況を検証し、生活習慣の改善に取り組む必要があることが明確に示された」と説明。「慢性的な睡眠不足は健康リスクにつながる」と強調しています。今のような時期だからこそ、ぜんそくをもつ人も、そうでない人も、通常より一層よく眠れているか気にしておくとよいのかもしれません。
<参考文献>
Too little sleep can mean more asthma attacks in adults
https://acaai.org/news/too-little-sleep-can-mean-more-asthma-attacks-adults
Luyster FS, Shi X, Baniak LM, Morris JL, Chasens ER. Associations of sleep duration with patient-reported outcomes and healthcare use in U.S. adults with asthma [published online ahead of print, 2020 May 7]. Ann Allergy Asthma Immunol. 2020;S1081-1206(20)30316-1.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32389780/
https://www.annallergy.org/article/S1081-1206(20)30316-1/fulltext