他人に言われたことを気にしすぎて悪く解釈してしまう。少しのことで相手と仲よくなるのを諦めてしまう。その結果、人間関係が長続きしない……。安定した人間関係を築くのは難しく、人間関係の悩みは尽きないものですよね。人間関係が続かないと悩むあなたに対するアドバイスを、相談者の95%の気持ちが回復したと評判の心理カウンセラーであり、自己肯定感の第一人者である中島さんに聞いてみましょう!
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【相談】人間関係が長続きしません
私は、他人に言われたことを気にしすぎてしまいます。この人はどういうつもりで私にこんなことを言ったのだろうと考え始めると止まらなくなり、つい、悪いほうに解釈してしまいます。自分のささいなひと言で相手が不機嫌になったり、勇気を出して素の自分を出したのに「理解されてないな」と感じたりすると、仲よくなるのを諦めてしまいます。そんな性格のせいか、私には親友がいません。職場の人とは仕事を辞めたらつながらなくなると思います。将来寂しいだろうなと思うけれど、将来の寂しさのために今の自分がムリするのもなんか違うなと感じます。そもそも人は何のためにだれかとつながるのでしょうか。どうすれば人と末永く仲よくできますか。
【回答】思い込みを手放して、ありのままの自分を受け入れることから始めましょう
あなたのような悩みを持つ人は少なくないはずです。「人は何のためにだれかとつながるのでしょうか」という疑問の裏には、だれかとつながってなくちゃいけない、なのに自分はつながることができていない、という思い込みや不安が隠されています。親友に関しても同じです。相性がよく価値観の合う友人と早い時期に出会い、親友として一生涯仲よくできたら理想的かもしれませんが、そのような相手をみんながみんな見つけているとは考えにくいですよね。
今のあなたは、自分のネガティブな側面にフォーカスするあまり、自分自身が本心から望むことよりも思い込みに振り回されてしまっているように感じます。自分を信じる「自己信頼感」や、ありのままの自分を受け入れる「自己受容感」が低くなっていて、そのために自分には価値があると思える感覚である自尊感情も低くなっているのではないかと思います。
でも、あなたの不安のもとになっている、だれかとつながっていなくてはいけない、親友がいなくてはいけない、という思い込みは、手放してしまってもいいのですよ。思い込みを手放したうえで、趣味を見つけて職場以外のコミュニティにトライしてみるのもいいかもしれません。今はオンラインなどいろいろな手段もありますし、自分の好きなことをやってもいいのではないでしょうか。
人間関係が長続きしない人は、どちらかというと、まじめで完璧主義だったり、ゼロか百か、白黒をハッキリさせたいと考える人が多いようです。自己肯定感が下がると、いっそうその傾向が出て、相手に完璧さを求めてしまったり、相手のイヤなところが見えたらすべてイヤになるというような、極端な思考法で相手を判断してしまいがちになります。まずは自分を受け入れる気持ちを高めるワークを紹介しましょう。
■今回おすすめするワーク:セルフハグ/エモーショナル・スケーリング
自分を受け入れ、他人を受け入れる気持ちを育む「セルフハグ」
仕事から帰ったら、まったり、ほんわかとリラックスできる服に着替え、右手で左肩を、左手で右肩をぐっと抱きしめてみましょう。自分で自分を抱きしめる、セルフハグというワークです。セルフハグにより、心の安らぎに関与するセロトニン、一種の脳内モルヒネであるエンドルフィン、愛情や精神的安心感をもたらすオキシトシンといった、神経伝達物質が出てきます。
セルフハグは、8秒くらいを目安にしましょう。8秒というのは、大人が深呼吸する時間です。深呼吸と同じ秒数、セルフハグをする。それだけで自分にやさしくなれます。そして、「ありがとう、私」「ガンバっているね、私」「どんどんよくなっているよ、私」と、自分を褒めてあげるのです。
最初は恥ずかしく感じるかもしれません。でも、あなたの最大の味方であるあなた自身が、もっと自分を大切にして褒めてあげてください。そうすることで、自己受容感が満たされ、自己肯定感が高まっていきます。そうすれば、他人を受け入れる気持ちも生まれてくるかもしれません。
負の感情を可視化する「エモーショナル・スケーリング」
もうひとつ、おすすめなのは、「エモーショナル・スケーリング」というワークです。これは、抱えてしまった負の感情をあえて数値化し、可視化して客観視することによって感情をやわらげるテクニックです。
まず、「これまでの人生で経験した最高の不安や恐れ」を思い出し、ノートに書きます。これが10点満点のネガティブ度になります。次に、「今、自分が感じている不安や恐れ」を書き、10点満点中何点か、採点してみるのです。
〈例〉
これまでの人生で経験した最高の不安や恐れ(=ネガティブ度10点)
・高校の体育祭の日に体操服を忘れて家を出てしまった
・大事な試験の日に寝坊してしまった
( 今の不安な気持ち )は10点中何点?
不安や恐れを感じているときには、脳の中の扁桃体と呼ばれる部位が過剰に活性化しています。脳科学の研究によると、エモーショナル・スケーリングのような方法で不安や恐れの感情を数客観視することで、扁桃体の過剰なはたらきがおさまっていくことがわかっています。
あなたの場合、相手に言われたことや、相手の反応を気にし過ぎて不安になり、悪いほうに解釈してしまったり、その人との関係を「ムリだな」と感じてしまったりしているのですね。そういう状態になったらいったん、「この状態は10点満点中何点かな?」と考えてみてください。そうすると、意外にたいしたことないな、気にすることないかな、と思えたりします。
ネガティブな感情を手放すきっかけをつかむことができる
もし8点や9点をつけるような状況であれば、1点でも下がるような方法を考えてみましょう。あなたの場合は対人関係ですから、いったん、対象となる人から物理的に離れます。そして緑の多い公園などがあれば、散歩してみましょう。それだけでも脳内にセロトニンが分泌され、心が落ち着きます。心が落ち着いたら、もう一度エモーショナル・スケーリングをやってみましょう。スケールは4,5点くらいに下がったのではないでしょうか。
エモーショナル・スケーリングには、過去のより大きな負の感情を思い出し、「あのときに比べれば」と今の感情を測定することで冷静さをとり戻す効果があります。自分の感情を数値化することで、ネガティブな感情を手放すきっかけをつかむことができるのです。対人関係での負の感情をコントロールできるとわかれば、自己肯定感を高めるために必要な自信や安心感の回復につながります。
自分を大切にし、セルフハグで自分をちゃんと褒めてあげること、ネガティブな感情を抱いたらそれを数値化して客観視すること。これらを続けていけば、感情に振り回されずに自己肯定感を高めることができ、人間関係も安定するようになりますよ。
取材・文/寺田千恵
参考書籍
『自己肯定感ノート』(SBクリエイティブ)