ユッケによる集団食中毒事件の発生から約3年。 レバ刺しやユッケに対する不安感を持ったものの、鶏わさ・鶏刺しは大丈夫と思っている人も多いのでは?そのホントのところを、探ってみました。
Contents 目次
肉と魚では生食のリスクがまるで違う
若い女性の間で人気があったユッケ。カロリーが低そう、元気が出るといったイメージが強かったようですが、2011年4月に発生した焼肉チェーン店の食中毒事件を受けて、メニューからほとんど消えています。厚生労働省が牛肉の生食に厳しい規制をかけたからです。
ユッケに限らず、牛レバー、豚レバー、鶏わさ、鶏たたきなどの生料理は、食中毒のリスクが大変高いものです。
生肉の食中毒の主な原因は、腸管出血性大腸菌(O157など)とカンピロバクターという2種類の菌です(次ページの表)。日本人はお刺し身など魚の生食に慣れていて、生食が大好きな人もいますが、この2種類の菌は魚にはいないもの。しかも重篤な食中毒を引き起こすので、魚のお刺し身のリスクとはまるで違うのです。
鶏わさや鶏たたきはカンピロバクターが心配
そして、もう一つの怖い菌がカンピロバクター。鶏わさや鶏たたきなど、鶏肉の生食が主な原因です。
カンピロバクターによる食中毒は、腸管出血性大腸菌のように重篤化することはまれですが、感染して数週間後に、手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症し、重い後遺症に悩むケースがみられます。有名人がかかった病気として、広く知られるようになりました。
カンピロバクターの患者数は多く、2012年の食中毒件数は第1位。患者数も2000人近くになりますが、実際はもっと多いとも言われています。
お店に並んでいる国産鶏肉のカンピロバクターの汚染率は、調査によって異なりますが数十%と高い割合を占めています。普通に汚染されているのです。また、調理時に器具や手指を介して汚染が広がることも確認されています。
特に小さな子どもは、重症になりやすいと考えられますので、鶏肉の刺し身など、生あるいは生に近い状態の鶏肉料理は食べさせないよう注意が必要です。また、鶏のから揚げやなべ料理などでは加熱不足が原因になることもありますので、 加熱が十分かどうか、確認してください。
また、生の鶏肉についていたカンピロバクターが、赤ちゃんの口に入るようなことがないよう、鶏肉にさわった手やまな板などをすぐに洗うように心がけてください。
豚レバーなども今後生食が禁止に
牛生肉、牛レバーを禁止した反動からか、最近は豚レバーの生食を提供するお店が出てきました。
しかし、豚レバーをはじめとする豚、イノシシ、シカの肉を生で食べると、E型肝炎ウイルスに感染するリスクもあり、寄生虫感染のリスクもあります。E型肝炎は、劇症化する可能性もあり、このまま野放しにするわけにはいきません。
国は現在、豚レバー等の生食でリスクが高いものについても、禁止することに決めました。
肉の生食のリスクは高く、国や保健所などは、肉の生食について注意を呼びかけています。自分や家族の命を守るためにも、生食のリスクはぜひ知っておいてもらいたいと思います。
イラスト / オオスキトモコ