幸せな出来事があると、心身ともに快くなるもの。こうした幸福感の効果はお腹にも及ぶよう。その背景にあるのが、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンです。脳のなかだけでなく、なんと腸のなかも癒してくれているというのです。
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腸の健康によい効果?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が広がって、病気への意識が前よりも高まったという人も多いかもしれません。感染症に強い体をつくるためにどうしたら…と考えることもあるのではないでしょうか。体の健康を考えるときには、心の健康も意識するとよいのかもしれないと、今回の研究はそうした点に注目しています。
研究を報告した米国テキサス大学の研究グループによると、幸福感と関係するホルモンとして知られているセロトニンは脳内での働きが注目されますが、体内に存在するセロトニンの90%はじつは腸内でつくられているといいます。ストレスを受けると腸内細菌のバランスが崩れるなど、最近では脳と腸の深い関係が注目されています。腸が「第二の脳」ともいわれるのも、脳と腸が互いに密接に影響し合うため。こうしたことから、お腹の健康に心と関係すると知られているセロトニンも強く関係するのではないかと予想しました。
そこで、セロトニンに着目した研究グループは、セロトニンが腸内の悪玉菌に影響を与えて、お腹の健康にも影響してくるのかどうかを調べました。悪玉菌の例として、食中毒を引き起こす大腸菌を使って、セロトニンの影響について詳しく調べたのです。
セロトニンによって感染症に強くなる
こうしてわかったのは、セロトニンが多く出ることで、腸が感染症にかかりづらくなり、腸の健康につながるということです。
つまり、幸福感につながるセロトニンが多く出ているとお腹の健康につながるということです。研究グループによると、セロトニンの影響で菌が弱まり感染症を起こせなくなることがわかったのです。それは体から出てくるセロトニンでも効果を発揮すると動物実験から確認しています。幸福感と関係するセロトニンは体の病気とも関係するのです。
「病は気」からといいますが、こうした脳と腸との関係が背景にあるのかもしれません。心の健康を保てるように、ふだんからストレスのマネジメントに注意したり、リラックスを心がけたりするのは、病気にならないようにするうえでも大切だと考えてよいでしょう。
<参考文献>
Happiness might protect you from gastrointestinal distress!
https://www.utsouthwestern.edu/newsroom/articles/year-2020/happiness-might-protect-you-from-gastrointestinal-distress.html
The Serotonin Neurotransmitter Modulates Virulence of Enteric Pathogens
https://www.cell.com/cell-host-microbe/fulltext/S1931-3128(20)30286-9
DOI:
https://doi.org/10.1016/j.chom.2020.05.004