最近、寝つくまでに時間がかかったり、夜中に目を覚ましてしまうなどの睡眠トラブルに悩まされていませんか。国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部 部長の栗山健一さんによると、健康のためにベストな睡眠時間は7時間。これより長くても短くても疾患の発症率が高まり、死亡率も上がってしまうといいます。また、睡眠の効率が高い人は、低い人に比べて風邪を引きにくいことも明らかに。コロナ渦で睡眠の重要性がますます高まっている今日この頃。私たちの健康を守るために知っておきたい睡眠のメカニズムと、眠りを改善する方法をご紹介します。
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ネット調査では61%が「睡眠の質が悪い」と回答
花王が実施した「睡眠に関する意識調査」によると、新型コロナ感染拡大以降に「睡眠の質が悪い」と回答した人は61%。睡眠の質が低下した原因としては、約半数が「不安やストレスなどで考え事が続いてしまう」と回答しています。
また、睡眠の質が悪化した人のうち、約5割が「眠りが浅い」と回答。新型コロナウイルスの感染拡大が、私たちの睡眠にまで大きな影響を与えていることがわかりました。
<調査概要>
実施期間:2020年7月22日〜7月29日
調査方法:インターネットリサーチ
対象:20歳〜59歳 男女 各100(N=882)
調査内容:コロナ禍の睡眠に関する意識調査 花王調べ
睡眠の質を上げるには、「深部体温」が重要
睡眠のメカニズムは、目覚めてから14時間後に脳が眠る準備を始める「体内時計」と、疲れた脳を休ませるために冷却する「恒常性維持」の2つ。睡眠に問題がない健康な人の場合、日中に上昇した深部体温が夜になると急激に下がり、眠気を感じてすんなりと寝つくことができます。
一方で睡眠が悪化している人の場合、夜になっても深部体温が下がらず、なかなか眠気を感じません。この状態でムリに寝ようとすると、寝つきが悪くなってしまい深夜や早朝に中途覚醒することが多くなります。では、深部体温を下げるにはどうしたらいいのでしょうか。
花王株式会社パーソナルヘルスケア研究所の市場智久さんによると、深部体温は発汗・熱伝導により体の外へ熱を逃す「放熱」によって下がるといいます。「放熱」は血管が拡張し、血流量が増大することで促進されます。
「蒸気温熱」で寝つきと睡眠の質を改善
花王が提案するのは、蒸気の温熱で血行を促進する「蒸気温熱」です。蒸気を伴わない「乾熱」と比べると、皮膚に対してより深く広く熱を伝えることが可能。寝る前に温熱シートなどを使って目のまわりを温めると、手足の温度が上昇して放熱が促進されます。心理的な心地よさと、放熱の促進。2つの効果で寝つきがよくなり、睡眠の質の改善が期待できます。
「炭酸入浴」で寝つきと睡眠の質を改善
もうひとつ、ぜひとり入れたいのが「炭酸入浴」です。炭酸ガスには皮膚の血管を拡張し、血流量を増加させる働きがあります。さら湯による入浴に比べて温まり効果が高く、また入浴後も皮膚の温度を高く維持できるのが特徴です。
炭酸入浴による血行促進は短時間でも効果があります。40度の湯に5分間入浴するだけでOK。手足の末梢部まで血行が促進され、全身が効率よく温められます。
また、30〜40代の女性を対象にしたテストでは、炭酸入浴を4週間継続すると身体的疲労感が軽減するとの結果も出ています。
睡眠の量と質を改善するためには、心と体を眠りやすい状態にすることがとても大切です。蒸気温熱と炭酸入浴はどちらも短時間でできるので、忙しい人にこそおすすめ。新しい時代のセルフメンテナンスに、とり入れてみてはいかがでしょうか。
文/渡辺裕希子