利き手は生まれもって決まっていると考えられており、これまでの研究からは約9割の人が右利きに。それは遺伝子の違いによることもわかってきています。さらに右利きと左利きでは脳の働き方も違うとわかってきました。海外の研究では、うつ病の「磁気治療」が左利きの人に効きやすい結果も。違いはさまざまな面に及ぶのかもしれません。
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左利きと右利きはどう違う?
古くは科学者のニュートンや発明家エジソン、最近では米国のオバマ前大統領など、左利きの著名人は数多く知られています。左利きの人のなかには、独特な発想から偉業を成し遂げる例も珍しくありません。もっとも右利きの人でも才能を発揮する人がいますから一概にはいえませんが、左利きゆえの才能があるのかもしれません。実際に、これまでの研究から、左利きの人はスピードを求められるスポーツで有利と報告されているほか、特定の病気が少なかったり、逆に多かったりするという研究もこれまでにありました。利き手によって心身に何らかの違いが生まれていると考えられています。
最近も、韓国の大邱慶北科学技術研究所の研究グループは、利き手による脳の反応の違いを詳細に分析して報告しています。体を透過する近赤外線を使った方法によって、左利きの人の脳では右利きの人には見られない差があることを確認したのです。
研究グループによると、左利きの人では右利きの人よりも脳を左右非対称に使う特徴があまり見られず、左利きの人では脳全体を使う傾向が見られることを突き止めています。体に触れたときの反応についても、右利きの人のほうが脳の反応が非対称に現れやすく、刺激に対する反応においても脳の使い方が利き手によって大きく異なることを示しました。
うつ病治療で違いを報告した研究も
さらに韓国の研究とは別に、オーストラリアのモナシュ大学とカナダのトロント大学の研究グループも最近、利き手に注目した研究を発表しています。
これはうつ病の治療の反応について調べたもので、磁気を使った治療である「反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS治療)」と呼ばれる治療の効果が利き手によって異なるかを調べたものです。この治療は日本でも2019年に保険適用になっており一般的になっている方法です。
分析の対象となったのは300人分の治療データです。ここからわかったのが、左利きのほうがrTMS治療への反応性が高く、治療が効きやすいという事実です。さらなる研究は必要ですが、磁気による頭部左側の治療を頻繁に行うと効果が出やすい可能性があるようです。脳の働きの違いが何らかの形で精神的な病気の治療と関連してくるといえそうで、利き手の秘密はこれからもさらに詳細に解明されるかもしれません。
<参考文献>
右利きと左利き、 遺伝子から見えてきた違いとは?
https://fytte.jp/healthcare/80445/
Jin SH, Lee SH, Yang ST, An J. Hemispheric asymmetry in hand preference of right-handers for passive vibrotactile perception: an fNIRS study. Sci Rep. 2020;10(1):13423. Published 2020 Aug 7. doi:10.1038/s41598-020-70496-y
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32770115/
https://www.nature.com/articles/s41598-020-70496-y
Touch-and-Know: Brain Activity during Tactile Stimuli Reveals Hand Preferences in People
https://dgist.ac.kr/en/html/sub06/060202.html?mode=V&no=647b58c07731b4bf2a9cb888170bd205
Fitzgerald PB, Hoy KE, Daskalakis ZJ. Left handedness and response to repetitive transcranial magnetic stimulation in major depressive disorder. World J Biol Psychiatry. 2020 Jul 27:1-5. doi: 10.1080/15622975.2020.1795255. Epub ahead of print. PMID: 32657212.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32657212/