コーヒーを飲むことが健康につながることがよくいわれるようになりました。苦みのある味のどこにそうしたパワーが秘められているのか、研究はさらに進んでいます。海外の研究から、進行性のがん、または転移性のがんという状態の悪いがんの人にとっても、コーヒーを飲むことで病気の進行を予防する効果があることが示されました。コーヒーによってもたらされる効果の幅広さが見てとれます。
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コーヒーのメリットはどれほどか
コーヒーのなかに含まれるクロロゲン酸などのポリフェノールに、抗酸化作用や抗炎症作用、インスリン感受性を高める効果などがあると報告されており、がんへの効果もあるのではと考えられています。疫学的な研究からは、コーヒー消費量が増えると大腸がんの再発や死亡率が低下することが示されていました。
米国ハーバード大学関連のダナファーバー研究所の研究グループは、大腸がんの患者を対象に、コーヒーに病気の影響を緩和する効果があるのかを調べました。今回、調べたのは、がんのなかでも特に進行したがんや転移の起きている人たちです。薬の臨床試験に参加している1171人を対象にコーヒーの飲用も調査し、このデータを使って、コーヒーの消費量とがんの進行との関係について分析しました。
がんの進行をとどめる効果を確認
こうして見えてきたのが、コーヒーの飲用が増えると、がんの進行するリスクが低下するということです。がんが進行せずに生存している状態である「無増悪生存率」のほか、がんの進行した場合も含めた「全生存率」とコーヒー飲用との関係を調べた結果、コーヒーを飲む量が増えるほどに、無増悪生存率と全生存率は改善していたのです。
追跡期間は生存者のなかで平均5.4年。死亡または病気の進行が確認されたのは1092人となっており、1日1杯のコーヒーを飲んでいる人では、まったく飲まない人と比べると、病気の進行のリスクは5%低く、死亡率は7%低くなっていました。コーヒーが増えるとさらに顕著で、2~3杯でも死亡率は18%、進行は18%減少。さらに、4杯以上だと死亡率36%、進行は22%減少していました。すでにがんになった人にとってもコーヒーがメリットをもつことになるわけです。ここでは大腸がんについて調べられたものですが、さらに今後、ほかのがんについても研究が進められる可能性もありそうです。
<参考文献>
Daily coffee consumption associated with improved survival in patients with metastatic colorectal cancer
https://www.dana-farber.org/newsroom/news-releases/2020/daily-coffee-consumption-associated-with-improved-survival-in-patients-with-metastatic-colorectal-cancer/
Christopher Mackintosh, Chen Yuan, Fang-Shu Ou, Sui Zhang, Donna Niedzwiecki, I-Wen Chang, Bert H. O’Neil, Brian C. Mullen, Heinz-Josef Lenz, Charles D. Blanke, Alan P. Venook, Robert J. Mayer, Charles S. Fuchs, Federico Innocenti, Andrew B. Nixon, Richard M. Goldberg, Eileen M. O’Reilly, Jeffrey A. Meyerhardt, Kimmie Ng. Association of Coffee Intake With Survival in Patients With Advanced or Metastatic Colorectal Cancer. JAMA Oncology, 2020; DOI: 10.1001/jamaoncol.2020.3938
https://jamanetwork.com/journals/jamaoncology/article-abstract/2770262