コーヒーを飲んで気持ちがラクになるのは、神経に効果を示す「カフェイン」の効果が関係しています。そのカフェインを妊娠中にもとってよいかは妊婦さんには気になるところ。少量であれば可能と考えられているのですが、このたび、妊娠や胎児に影響を与えない「最小摂取量」のたしかな証拠がないと報告されました。妊娠中はカフェインを避けたほうがよさそうというのです。
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過去20年間の研究結果を検討
コーヒーやお茶、清涼飲料水などに入っているカフェインは神経に働きかける効果をもちます。そのおかげでカフェインにはいろいろな効果が期待できる一方で、とり過ぎによる害もあり、各国の保健機関は適切な摂取量についていろいろとアドバイスしています。妊娠中の女性については欧米で1日200 mg、ふつうの濃さのコーヒーにして約2杯までとされており、日本でもこの基準を踏まえて注意喚起しています。しかし、こうした目安は示されているものの、カフェインが妊娠や胎児に与える影響はまだはっきりとはわかっていません。
そこで、アイスランド・レイキャビク大学の研究者は、カフェインをとることで妊娠や胎児の健全性に影響があるかどうかを調べた過去20年間のさまざまな研究を集め、検討してみました。分析対象として、過去の研究結果をまとめて分析した研究(「メタ解析」と呼ばれます)11件と追跡調査37件の合計48件が集まり、妊娠に関連して起きていた6種類の出来事(流産、早産、死産、低出生体重および胎児発育不全、子ども時代の白血病、子ども時代の肥満)とカフェインとの関連性について報告されていました。
摂取量が増えるほどリスクアップ
ここから見えてきたのが、検討した研究48件の大半において、妊娠中のカフェイン摂取がよくない結果につながっていることでした。
追跡調査37件では、カフェインの摂取量が増えると、よくない妊娠関連の出来事の起こるリスクが高くなるという結論が、早産を除く5種類の結果について一貫して示されていました。メタ解析11件でも、結論のおよそ8割で、妊娠中にカフェインをとると流産、死産、低出生体重および胎児発育不全、子ども時代の急性白血病のリスクが上がるとされていました。
また、カフェインをたくさんとるほどリスクが高くなるという報告が多かったうえ、よくない妊娠関連の出来事につながらない「最小摂取量」が確認されないという研究も多くありました。
この結果から研究者は、すべて追跡調査やその分析の結果なので因果関係は証明できないものの、妊娠中にカフェインをとるとよくない影響があるという「相当な証拠」があると結論。妊娠中でも少量ならカフェインをとってもよいという現在のガイドラインに疑問を呈し、妊娠中の女性や妊娠を望む女性はカフェインを避けるほうがよさそうと指摘しています。日本でも参考にするとよいかもしれません。
<参考文献>
食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html
No safe level of caffeine consumption for pregnant women and would-be mothers
https://www.bmj.com/company/newsroom/no-safe-level-of-caffeine-consumption-for-pregnant-women-and-would-be-mothers/
James JE. Maternal caffeine consumption and pregnancy outcomes: a narrative review with implications for advice to mothers and mothers-to-be [published online ahead of print, 2020 Aug 25]. BMJ Evid Based Med. 2020;bmjebm-2020-111432. doi:10.1136/bmjebm-2020-111432
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32843532/