腎臓は背中の両側にあり、健康を保つために重要な臓器のひとつです。血液のなかにある老廃物を尿として排せつするほか、血圧の調節をしたりする働きがあります。冷えやむくみ、太りやすさにも関係。若い年代で腎臓の働きが悪くなると、年齢を重ねてから問題になりやすいとの報告がありました。健康診断にも関係するため、気をつけるとよさそうです。
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20年にわたって追跡検査
胃や心臓、肺などと比べると、「沈黙の臓器」と呼ばれることもある腎臓は、健康なときには意識する機会が多くないかもしれません。ところが、こうした認識とは相反するように、日本では腎臓の働きが低下する腎不全を患う人が1300万人に上り、死因の第7位に。ほかの健康に関する問題と同じように、誰もが腎臓の健康を注意しておくほうがよいといってよいかもしれません。
今回、研究結果を報告したのは、米国、ノースウエスタン大学などの研究グループです。腎臓の状態は通常、「糸球体(しきゅうたい)」という、腎臓のいわばフィルター部分のろ過能力や、尿にたんぱく質がもれ出ているかなどを検査して調べます。研究グループは、2604人を20年間追跡調査し、5年ごとに血液と尿の検査を実施しました。
検査結果は、腎臓の機能に関する基準と照らし合わせて、腎臓の機能の低下、つまり腎不全になる危険サインがない場合、1つある場合、2つ以上ある場合の条件に従ってグループ分けし、その上で、20年後に記憶力や思考力など認知機能のテストをして比較しました。
なお、これまでの研究によると、腎臓が完全に働かなくなると、記憶力や思考能力に問題が起きるリスクが3倍も高くなると報告されているほか、別の研究では、腎臓の働きがほんの少しでも悪くなると、脳に悪影響が及び、やはり認知機能が下がる危険性が高まることが判明していました。こうした研究も踏まえ、今回は長期にわたる影響を分析した形になります。
機能低下するほど、認知機能が低下
こうして判明したのは、腎不全になる危険のサインが多かった人ほど、認知機能のテスト結果がよくないということです。
20年の間に腎不全になる危険のサインが1つ以上現れた人は対象者2604人のうち427人で、こうしたグループは危険のサインがなかったグループに比べると、認知機能テストの結果が低くなっていました。腎臓が悪い人では、コレステロールや血圧、糖尿病などの病気になっていることも多いのですが、こうした要素と関係なく、腎臓が悪いとその分だけ認知機能に悪い影響が及んでいるという分析結果が出ました。
「腎臓の機能は気づかないうちに低下することが多い」と研究グループは指摘。若いうちから腎臓の働きを保つのが大切だといいます。健康診断で腎臓の機能が低下しているといわれたら、医療機関で相談するのもよいかもしれません。
<参考文献>
KIDNEY PROBLEMS AS A YOUNG ADULT MAY AFFECT THINKING SKILLS IN MIDLIFE
https://www.aan.com/PressRoom/Home/PressRelease/3816
Sedaghat S, Sorond F, Yaffe K, et al. Decline in kidney function over the course of adulthood and cognitive function in midlife [published online ahead of print, 2020 Sep 2]. Neurology. 2020;10.1212/WNL.0000000000010631. doi:10.1212/WNL.0000000000010631
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32878993/