出産年齢と寿命—この意外な関係をとりもつ「テロメア」。遺伝子検査などでおなじみのあのDNA、その端っこ部分の呼び名です。このテロメアの長さが、健康や寿命と関連するということで近年、注目を集めていますが、今回の報告によると、最後の子どもを産んだ年齢が高い女性は、このテロメアが長い、つまり健康で長生きしそうなのです。
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米国女性1200人以上のデータを分析
DNAは細胞分裂のたびにコピーされますが、DNAの長い鎖の末端部分であるテロメア部分は細胞分裂のたびに短くなることが知られています。そして短くなり過ぎると、その細胞は分裂できなくなる「細胞死」という状態に。そのため、テロメアの長さが寿命に関係するのではないかと考えられています。
さらに、糖尿病などの生活習慣病や心臓・血管の病気、がんなどとテロメアの長さとの関連性を示すデータも多く存在しています。テロメアが短くなるのを防ぐ、あるいは長くするための研究も盛んに行われています。女性では白血球細胞のテロメアの長さが、寿命に関連するという報告がありますし、小規模な研究からですが、最後の子どもを産んだ年齢との関連性も指摘されていました。
このたび、米国の研究グループは、この最後の子どもを産んだ年齢と白血球細胞のテロメアの長さとの関係に着目。もっと広く調べてみようと、アメリカで毎年行われている「国民健康栄養調査(NHANES))の参加者から、人種・民族や社会的な背景などが異なる女性1200人以上のデータを分析してみました。
1〜2人の出産歴の女性のみで関連性
ここから見えてきたのが、最後の子どもを産んだ年齢が高いほど、白血球細胞のテロメアが長い、つまり健康で長生きすると考えられることです。
最後の子どもを産んだ年齢を、25歳未満、25〜29歳、30〜34歳、35〜39歳、40歳以上の5グループに分けて分析すると、25歳未満が一番短く、しだいに長くなっていました。ただ、この関連性は、経口避妊薬を使ったことがあって、1人または2人の子どもを産んだ女性に限られていました。
最後の子どもを産んだ年齢が高いと、テロメア が長くなるのか、あるいはテロメアが長いと全般的な健康状態がよくて、結果的に高齢で出産できるのかはわかりません。とはいえ妊娠歴と健康寿命には何らかの関係があるようです。
<参考文献>
Latour CD, O’Connell K, Romano ME, Kantor ED, Du M. Maternal age at last birth and leukocyte telomere length in a nationally representative population of perimenopausal and postmenopausal women. Menopause. 2020 Oct 5. doi: 10.1097/GME.0000000000001669. Epub ahead of print. PMID: 33038145.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33038145/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33110040/
https://journals.lww.com/menopausejournal/Abstract/2020/11000/Maternal_age_at_last_birth_and_leukocyte_telomere.9.aspx
Women’s Expected Longevity Linked to Age at Birth of Last Child
https://www.menopause.org/docs/default-source/press-release/telomere-length-and-mortality-rate-10-7-20.pdf