風邪やインフルエンザの流行が気になる時期になりました。新型コロナウイルス感染症の収束も見えないなか、今年は、例年よりも感染症には要注意です。マスク、手洗い、消毒、3密を避けるという「新しい生活様式」を実践するとともに、免疫力を向上させることも大切です。そのカギは、腸活にあります。ウイルスに負けない体を作っていきましょう。小林メディカルクリニック東京の院長で、腸活にくわしい小林暁子先生に伺いました。
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ウイルスを撃退する免疫システムは、腸にある!
そもそも「免疫」とは、どういうものか、知っていますか? 免疫とは、ウイルスや細菌から体を守る防御システムです。大きく分けると、自然免疫と獲得免疫の2つがあります。
「ウイルスや細菌が体に入ってきたときに、最初に働くのが、もともと体に備わっている自然免疫です。体内では、常にNK(ナチュラルキラー)細胞、マクロファージ、好中菌といった免疫細胞がパトロールしており、ウイルスや細菌が入ってくると、免疫細胞が攻撃を加え、感染や発症を防いでくれます。この自然免疫で対処できなかった場合、次に働くのが獲得免疫です。獲得免疫とは、一度、細菌やウイルスに対処したり、ワクチンを摂取することで得られる免疫のこと。病原体の情報は記憶されるため、同じウイルスや細菌が入ってきたときに、すばやくやっつけて、感染や発症を防ぐのです」
このように免疫システムがしっかり働いていれば、風邪やインフルエンザのウイルスが体に入ってきても、感染、発症を抑えることができます。たとえ、発症したとしても、症状は重症化しにくく、回復が早くなります。新型コロナウイルスの場合、多くの人は感染したことがなく、獲得免疫が働かないため、自然免疫の力を高めておくことが重要です。そこで、カギになるのが、腸活です。
なぜ、免疫力に腸活が関係するのでしょうか。
「それは、体内の免疫細胞の70%が腸に集まっているからです。体内に入ってきたウイルスや細菌を撃退して、体内に吸収させないようにする防御システムが腸にあるのです。特に、小腸の粘膜には、免疫システムの司令塔として働くバイエル板という最大の免疫組織があります。免疫システムがしっかり働くには、腸内の環境をよい状態にしておくことが大切なのです」
腸内の善玉菌を増やして、腸内環境を良好に
腸内には、100兆個以上の腸内細菌がすみついています。小腸から大腸にかけて、腸内細菌が群生する様子は、お花畑に似ていることから“腸内フローラ”と呼ばれています。「良好な腸内環境」というのは、この腸内フローラの細菌が関係しています。
「腸内フローラには、多種多様な菌がいて、その種類は、300種以上とも2万種以上ともいわれています。これらの菌は、働きによって、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3タイプに分かれますが、良好な腸内環境とは、日和見菌も悪玉菌も共存しつつ、善玉菌が優勢な状態をいいます」
ここで、善玉菌、悪玉菌、日和見菌について解説しておきましょう。
●善玉菌
健康の維持や増進をサポートする菌。免疫力や腸の免疫システムを守る“腸管バリア機能”を高めます。また、アレルギーを予防する、肥満を防ぐといった働きもあります。糖や食物繊維をエサにして増え、腸内環境が酸性から中性のときに活性化します。
【種類】ビフィズス菌、乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)、アシドフィルス菌など
●悪玉菌
体に悪い影響を与える菌。増えすぎると、腸内を腐敗させて、老化を促進したり、腸壁を弱らせたり、便のニオイを強くしたりします。悪玉菌がつくる有害物質は、全身の不調や病気の引き金にもなります。
【種類】ウェルシュ菌、ブドウ球菌、大腸菌など
●日和見菌
腸内で善玉菌が増えると善玉菌の味方を、悪玉菌が増えると悪玉菌の味方をします。
【種類】連鎖球菌、バクテロイデスなど
腸内環境は、不規則な生活やストレス、便秘などによって悪玉菌優性に傾きがちです。次回は、腸内環境を良好に保つためのノウハウを紹介します。
取材・文/海老根祐子