お腹の痛みが続いたり、お腹を下したりする症状につながる病気として知られている「炎症性腸疾患」。「クローン病」と「潰瘍性大腸炎」という2つの病気がこのなかには含まれています。日本でも悩まされている人は多いのですが、欧米のほうが患者数は多いという事実は不思議です。海外の研究からは、理由のひとつとして食事との関係が報告されました。お腹の健康を考えるうえで参考になりそうです。
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腸と食事の関係とは?
全身の病気のなかでも日常生活への影響が大きいのが腸の病気。日本で炎症性腸疾患は国から難病に指定されるほど治療が難しい病気。腹痛や下痢などのトラブルにいつまでも悩まされてしまうことから、厄介な問題になっています。米国でも1999年に200万人の患者がいましたが、2015年には300万人に急増したといいます。しかも子どもで増えているとのこと。欧米で病気になる人が他国よりも多く、脂肪や糖類の多い食事の影響が考えられていました。
米国テキサス大学の研究グループが注目したのは「糖類」の影響です。そこで動物実験を行って、糖類の大腸への影響を調べました。糖類を摂取したあとの腸内細菌の変化のほか、大腸に起きている炎症の状態を確認したのです。
将来の感染を知るヒントに
こうして判明したのは、腸内細菌の変化でした。具体的には、糖類を摂取することで、腸の粘液の主成分であるムチンを分解する酵素をもつ腸内細菌が増えていたのです。これによって腸の粘膜にあるバリア機能を壊し、腸の炎症の引き金になっている可能性がありました。
研究グループは、食生活の変化によって、腸内細菌の群である「腸内細菌叢」が変化することが示されたと指摘。「食べ物を気にしなければならないことがはっきりした」と強調しています。
また、研究グループはさらなる動物実験でもっと直接的に腸内細菌叢の影響を調べています。というのは、腸内細菌叢が変化した動物の糞便をほかの動物に摂取させて腸に起きる変化を見たのです。すると大腸炎が悪化することが判明。研究グループによるとこれは腸内細菌叢の影響といい、腸の炎症に強い関係があると説明しています。
お腹の調子が悪い人は、ふだん食べているものに気をつけることはやはり大切なのでしょう。日頃の食生活の大切さを考えるきっかけにするとよさそうです。
<参考文献>
Khan S, Waliullah S, Godfrey V, Khan MAW, Ramachandran RA, Cantarel BL, Behrendt C, Peng L, Hooper LV, Zaki H. Dietary simple sugars alter microbial ecology in the gut and promote colitis in mice. Sci Transl Med. 2020 Oct 28;12(567):eaay6218. doi: 10.1126/scitranslmed.aay6218. PMID: 33115951.
https://stm.sciencemag.org/content/12/567/eaay6218
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33115951/
High-sugar diet can damage the gut, intensifying risk for colitis
https://www.utsouthwestern.edu/newsroom/articles/year-2020/high-sugar-diet-can-damage-the-gut.html