新型コロナウイルス感染症の拡大により、自覚症状がないまま血糖値が高くなっている「隠れ糖尿病」のリスク増加が指摘されているよう。そうしたなかで、このたび、飼い犬の糖尿病と飼い主の糖尿病とが関連するという報告がありました。ペットの犬が糖尿病だと、飼い主も糖尿病になるリスクが高いという意外な関係があるというのです。でも、飼い猫では、このような関連性は見られなかったそう。
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スウェーデンのペット保険登録から調査
人間と同様に犬や猫も糖尿病になります。原因はさまざまですが、年齢や遺伝といった要因に加えて、やはり人間と同じように食事や肥満、運動量なども要因と考えられています。また、過去の研究では、飼い犬の肥満と飼い主の肥満が関連する可能性が指摘されています。
そこで、スウェーデンと英国の研究グループは、犬および猫の糖尿病と飼い主の糖尿病との関連性について調べてみました。スウェーデンのペット保険登録や、患者・処方薬登録などのデータから、飼い犬および猫1匹と飼い主1人の組み合わせにして、(たとえば、1人で2匹飼っている場合は2組、世帯3人で1匹を飼っている場合は3組と数えました)、犬について20万ペア以上、猫について12万ペア以上を選定。そのうえで、6年の間にいずれか、または両方が糖尿病になるリスクを分析しました。研究の最初からどちらも糖尿病にかかっていたペア(犬、猫いずれも全体の約5%)は除外しました。
ライフスタイルを共有しているせい?
こうして判明したのは、飼い犬が糖尿病のペア(最初から、あるいは6年の間に糖尿病になったペア)は、そうではないペアに比べて、飼い主も糖尿病になる確率が38%も高いことです。飼い主の年齢や性別、社会経済的背景、飼い犬の種類や年齢・性別などで調整しても、この数字に大きな変化はありませんでした。猫については、このような関連性は見られませんでした。
つまり、飼い犬の糖尿病は、飼い主が糖尿病になるリスクが高いことの指標になる可能性があると研究グループは指摘。今回の研究では、世帯のライフスタイルなどは調べていませんが、運動や食事のパターン、肥満などを共有しているせいではないかと、研究グループは考えています。運動の習慣が重要な要素であれば、猫では関連性が見られなかった理由にもなります。犬と飼い主両方の糖尿病リスクに影響する、ライフスタイルや環境的な要素があるのかもしれません。
<参考文献>
Diabetes in dogs may indicate elevated risk of type 2 diabetes in their owners
https://www.uu.se/en/news-media/news/article/?id=15962&typ=artikel&lang=en
Delicano RA, Hammar U, Egenvall A, Westgarth C, Mubanga M, Byberg L, Fall T, Kennedy B. The shared risk of diabetes between dog and cat owners and their pets: register based cohort study. BMJ. 2020 Dec 10;371:m4337. doi: 10.1136/bmj.m4337. PMID: 33303475.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33303475/
https://www.bmj.com/content/371/bmj.m4337