長期化しつつある新型コロナウイルス感染症のパンデミック。医学的・科学的な解明が進んでいますが、いまだにはっきりしていない面も多く残されています。そのひとつが、感染からだいぶ経っても症状の存在する後遺症。このたび、入院するほどではない軽症の人でも3分の1で症状が残るとする報告がスイスからありました。
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3〜5月の軽症感染者700人のデータ
日本でも新型コロナウイルス感染症の後遺症に対する警戒の声が聞かれるようになっています。そうした不調が続く状態は、海外では「Long COVID」(ロングコビッド、コロナ後遺症および長期コロナ感染症)と呼ばれています。実際、Long COVIDの報告が多くなっており、日本でも最近、研究結果が出てきています。
今回、医学誌『Annals of Internal Medicine』で後遺症についての報告を行ったのは、スイス・ジュネーブにあるジュネーブ大学などの研究チーム。今年3月から5月にかけて、同州の新型コロナウイルス感染症患者の半数以上に対応したのがジュネーブ唯一かつ最大の公共病院である同大学の付属病院でした。
その際、基礎疾患などのハイリスクではなく、入院には至らない軽症の人に、電話で経過を確認するシステムがとられました。今回ここからおよそ700人分の研究データが得られました(平均年齢43歳、60%が女性、25%が医療従事者、約70%が基礎疾患などのリスク要因のない人)。研究チームは、およそ1か月半後のフォローアップ結果を分析しました。
後遺症の可能性を認識する必要
ここからわかったのが、診断から1か月半たっても、3分の1近くの人で、新型コロナウイルス感染症に関連した症状が1つ以上見られたことです。症状としては、疲労感が14%、息切れ9%、味覚および嗅覚の損傷12%、咳6%、頭痛3%などでした。この間に、およそ700人のうち主に高年齢の人や基礎疾患のある人が約40人、入院しました。また、症状のつらさに加えて、多くの人が、いったいいつまで症状が続くのか、治るのだろうかという不安を抱えていることがわかりました。
このような不安に対して、まだ医学的に明確に答えることはできませんが、同付属病院はコロナ後遺症に苦しむ人に向けた特別な相談窓口を設置し、今回の研究対象者もさらに追跡を続けています。研究グループは、健康な人でも、感染したあと長く症状が残る可能性があるため、予防が最も大切と注意を促し、後遺症の存在を広く認識してほしいと呼びかけています。
<参考文献>
COVID-19: persistent symptoms in one third of cases
https://www.unige.ch/communication/communiques/en/2020/covid-19-les-symptomes-persistent-dans-un-tiers-des-cas/
Nehme M, Braillard O, Alcoba G, Aebischer Perone S, Courvoisier D, Chappuis F, Guessous I. COVID-19 Symptoms: Longitudinal Evolution and Persistence in Outpatient Settings. Ann Intern Med. 2020 Dec 8. doi: 10.7326/M20-5926. Epub ahead of print. PMID: 33284676.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33284676/
https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M20-5926