丈夫な骨や歯を作るのに大切なビタミンD。腸や免疫系にもよいと考えられていて、ぜんそくやアトピーなどのアレルギー性疾患や大腸がん、ウイルス感染症などさまざまな病気との関係についても研究が進んでいます。そんななか、ビタミンDのサプリメントをとっていると、致命的な進行がんになるリスクが下がるという報告がありました。
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過去の試験データを再検証
ビタミンDとがんとの関係については、長い間研究が進められてきました。赤道近くに住む人は日光を浴びることが多いためにビタミンDが体内でたくさん作られますが、特定のがんになるリスクや死亡リスクが低いそうです。また、がん細胞や動物を使った実験によると、ビタミンDはがんの進行を遅くするという結果も。ただ、人を対象とした試験では、明確な効果が証明されていませんでした。
また、さまざまな人種・民族を含む2万5000人以上が参加して、ビタミンDとオメガ3脂肪酸のサプリメントの効果を調べた米国の試験でも、全体的ながんのリスクは下がりませんでした。しかしその一方、ビタミンDのサプリメントをとった正常体重の人で、がんによる死亡リスクが下がるという結果は出ていました。
そこで今回、ハーバード大学などの研究グループは、死亡リスクの高い進行がん(転移性など、進行した状態で発見されるもの)に限って、この試験のデータを再検証。BMIも含めて、ビタミンDとの関連性を調べてみました。
BMIによって効果が異なる
こうしてわかったのは、ビタミンDのサプリメントをとった正常体重(BMI 25未満)の人は、とらなかった人に比べて、進行がんのリスクが明らかに低かったことです。
試験期間およそ5年の間に、1600人余りの人が乳がん、前立腺がん、大腸がん、肺がんなどさまざまながんになりましたが、進行がんになったのは、ビタミンDをとらなかった半数の参加者では274人だったのに対して、ビタミンDをとった残り半数では226人と、リスクが17%減少。さらに、BMIで分けると、BMI 25以上の人ではビタミンDをとってもとらなくてもほとんど差がありませんでしたが、BMI 25未満の人ではリスクが40%近く減っていました。
BMIに関しては、ビタミンDと糖尿病との関連性を調べた過去の研究でも、正常体重の人では効果が見られていました。一方で肥満の人では有効ではなかったという結果に。このほか、体脂肪が多いと一部のがんになりやすいという証拠もあるそう。
研究グループは、ビタミンDは進行がん、転移性がんを防ぐ可能性があるとして、BMIとの影響をさらに調べる必要があると指摘しています。
<参考文献>
Vitamin D Supplements May Reduce Risk of Developing Advanced Cancer
https://www.brighamandwomens.org/about-bwh/newsroom/press-releases-detail?id=3737
Chandler PD, Chen WY, Ajala ON, Hazra A, Cook N, Bubes V, Lee IM, Giovannucci EL, Willett W, Buring JE, Manson JE; VITAL Research Group. Effect of Vitamin D3 Supplements on Development of Advanced Cancer: A Secondary Analysis of the VITAL Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2020 Nov 2;3(11):e2025850. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2020.25850. PMID: 33206192; PMCID: PMC7675103.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33206192/
https://jamanetwork.com/article.aspx?doi=10.1001/jamanetworkopen.2020.25850