日本ばかりではなく世界の先進国で少子化がクローズアップされています。初婚年齢が高くなるなどの背景がありますが、ストレスとの関連が指摘されるようにもなっています。これまでも関連は疑われていましたが、このたび海外研究において、その関連性に新しい発見がありました。
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ストレスがあると妊娠に影響?
最近の日本においては、赤ちゃんの16人に1人が人工授精で生まれています。人工授精は不妊治療のなかの一部ですから、不妊治療は本当に一般的になっていると考えられます。妊娠に困難を伴う場合に、不妊治療を受けることになりますが、不妊の要因はさまざまです。男性、女性いずれも関係しますし、そこには年齢のほか、生活習慣などが関与していると考えられます。これまでにはストレスとの関係も可能性が指摘されていました。
このたびニュージーランド、オタゴ大学の研究グループが、ストレスと不妊との関連について研究を行いました。研究グループが注目したのは、「生殖ホルモン」を出している神経に働きかける、「RFRPニューロン」という神経細胞の存在です。
正常な状態では、生殖ホルモンを出す神経の働きによって妊娠しやすい体の状態になります。しかしストレスがかかると、ストレスホルモンとも呼ばれる「コルチゾール」が体内に増えてきて、生殖ホルモンの分泌を阻害することがわかっていました。
今回、研究グループは、生殖ホルモンを出す神経に働きかける、RFRPニューロンの働きを止めてみて変化を調べました。これによってストレスホルモンの影響がどのように現れるのかを検証したのです。
ストレスにより生殖機能に影響
こうして浮かび上がってきたのが、ストレスによって不妊に至るメカニズムです。研究グループが、RFRPニューロンという神経細胞の働きを止めると、ストレスホルモンによる不妊の状態が治ったのです。というのも、ストレスホルモンが出ると、それまでは生殖ホルモンの分泌が阻害されたのに、RFRPニューロンが働かなくなると、阻害されなくなったのです。つまり、ストレスが効かなくなったわけです。少し複雑ですが、ストレスは神経やホルモンの働きによって体に悪影響を及ぼしているのですが、たしかに不妊もストレスとつながりがあると考えられました。
研究グループは、これまで見えなかった“ミッシングリンク”がRFRPニューロンである可能性を説明しています。このRFRPニューロンの働きを抑える薬が開発できれば、妊娠しやすくする治療も可能になるかもしれないのです。
<参考文献>
Q16.生殖補助医療の治療成績はどの程度なのですか?(日本生殖医学会)
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa16.html
Researchers find “missing link”
https://www.otago.ac.nz/news/news/otago758274.html
Mamgain A, Sawyer IL, Timajo DAM, Rizwan MZ, Evans MC, Ancel CM, Inglis MA, Anderson GM. RFamide-related peptide neurons modulate reproductive function and stress responses. J Neurosci. 2020 Nov 20:JN-RM-1062-20. doi: 10.1523/JNEUROSCI.1062-20.2020. Epub ahead of print. PMID: 33219002.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33219002/
https://www.jneurosci.org/content/early/2020/11/20/JNEUROSCI.1062-20.2020