新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、世界中の人々の生活をすっかり変えてしまいました。仕事も含めて日常のあらゆる面で制約を受けるなか、コロナ禍の生活に慣れてきたという見方も出てくるように。ただし、海外の研究によると、神経症の傾向が強い人は不安感が強くなりやすいといいます。身近な人と接するときにそんな個人差を気にかけるとよいかもしれません。
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パンデミック初期のドイツで調査
コロナ禍のような極端な状況に見舞われると、どうしてもマイナス思考になりがちです。不安や恐怖といった負の感情が強くなると、幸福感が下がり、心身ともに負担感は増してきます。ひとり暮らしの人などには影響が及びやすいなど、個人差も浮き彫りになりつつあります。
このたびドイツの研究グループが着目したのは、自分や社会に対してネガティブな感情を抱きがちで、不安感や恐怖感がもともと強く出やすい性格である「神経症的傾向」のある人です。研究では、ドイツで初めてのロックダウンが行われた(2020年3月18日)少し前に調査を開始。約2週間にわたっておよそ1600人にオンラインのアンケート調査を実施しました。年齢やどのような教育を受けてきたか、職業は何かなど社会的背景、神経症的傾向を含む性格の特徴などを調べたうえで、パンデミックへの対応や行動について答えてもらい、スマートフォンを使って、1日のランダムな時点での感情の状態も確認しました。
性格が大きく影響
ここからわかったのは、神経症的傾向の強い人は、コロナ禍で感情的にマイナスの影響を受けやすいことです。アンケートの回答から、大半の人は比較的うまく適応しているものの、強い不安感や恐怖感を示す一群が浮かび上がったのです。このグループについて調べたところ、年齢や健康状態などの要素よりも、性格が大きく関連していると判明。神経症的傾向が強いという性格要素をもつ人が、コロナ禍のせいでネガティブな気持ちが強くなり、さらに感情的に不安定に陥り、健康に対する心配も増したと明らかになりました。
神経症的傾向が強いかどうか知ることは、コロナ禍で感情的な問題を抱えやすい人を知るために有効な手がかりになりそうだというわけです。日本でも新型コロナで生じている問題に対処したり、人と接したりするなかで、こうした研究を参考にできるところがあるかもしれません。
<参考文献>
Especially neurotic people feel worse emotionally during the corona crisis
https://www.uni-muenster.de/news/view.php?cmdid=11432&lang=en
Kroencke L, Geukes K, Utesch T, Kuper N, Back MD. Neuroticism and emotional risk during the COVID-19 pandemic. J Res Pers. 2020 Dec;89:104038. doi: 10.1016/j.jrp.2020.104038. Epub 2020 Oct 13. PMID: 33071370; PMCID: PMC7550263.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33071370/
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0092656620301276