最近は在宅勤務が定着している人が増えていますが、そんななかでも屋外に出ないと仕事にならない人も多いことでしょう。そんな屋外で仕事をしている人には朗報かもしれません。海外の研究から、屋外で働く仕事を何年も続けていると、乳がんのリスクが低下するという報告がありました。その理由はどういったものなのでしょうか。
Contents 目次
屋外での仕事にメリット?
女性にとって乳がんは最も身近ながん。その乳がんのリスクを高める研究は盛んですが、逆にリスクを低下させる要因についても研究が進められています。そうしたなかで注目されているもののひとつに、日光の効果があります。過去の研究によると、日光に含まれている「紫外線B波」に乳がんの予防効果がある可能性が示されているのです。たとえば、屋外の仕事を長く続けていると、紫外線をたくさん浴びることになります。そうした場合に、乳がんのリスクが低下するのではないかという考え方もありました。
そこで今回、デンマークの研究グループが、仕事の間にさらされる紫外線のレベルと乳がんリスクとの関連を検証しました。対象としたのは、乳がんにかかった女性およそ3万8000人と、乳がんにかからなかった女性およそ20万人です。職歴から仕事で浴びた紫外線レベルを計算。出産などの要素も考慮したうえで、紫外線と乳がんとの関連性を分析したのです。
リスクは1割以上の低下に
こうしてわかったのは、紫外線を浴びることによって乳がんのリスクが低下する可能性があることでした。具体的には、仕事で浴びた紫外線の量が多い場合に、50歳以降の乳がんの発症リスクの低下に関連していました。長期間(20年以上)浴びていた場合は17%、浴びた合計量が多かった場合は11%、リスクが低くなっていたのです。
この結果は紫外線量の計算が正確とはいえなかったり、経口避妊薬やホルモン補充療法のほか、アルコールや肥満、運動量などの乳がんリスクに影響する生活習慣について考慮していなかったりします。それでも研究グループは、仕事の際に浴びた紫外線は、乳がんのリスクと関係している可能性がありそうだと推定します。紫外線を肌で受けると体内ではビタミンDが作られるため、ビタミンDの関与に研究グループは注目します。コロナ禍で免疫機能に関係する栄養素としてもビタミンDは注目されているところ。因果関係についてはわからないこともありますが、屋外に出て活動するメリットのひとつとして参考にしてもいいかもしれません。
<参考文献>
Working outdoors linked to lower risk of breast cancer among older women
https://www.bmj.com/company/newsroom/working-outdoors-linked-to-lower-risk-of-breast-cancer-among-older-women/
Pedersen JE, Strandberg-Larsen K, Andersson M, Hansen J. Occupational exposure to solar ultraviolet B radiation and risk of subtypes of breast cancer in Danish women. Occup Environ Med. 2021 Feb 2:oemed-2020-107125. doi: 10.1136/oemed-2020-107125. Epub ahead of print. PMID: 33531359.
https://oem.bmj.com/content/early/2021/01/14/oemed-2020-107125
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33531359/